Jeisonの独り言

ユートピアとは?『未来惑星ザルドス』感想

2016年6月29日

1974年製作のイギリス映画。
低予算ではありながらストーリーはよくできており「生」と「死」という極めて哲学的なテーマを投げかけています。
若き日のショーン・コネリーが主演を務めています。

タイトルからするとまるで他の惑星の話のように感じますが、舞台となるのは遠い未来の地球です。
一応ジャンルはSFでしょうかね?

※以下ネタバレ有り

23世紀の地球は寿命がなく不老不死の「エターナル」と呼ばれる人々と野蛮で寿命のある「獣人」たちとに分かれていた。
エターナルはザルドスという偶像を獣人たちに崇拝させ、彼らを使役することで自らの食料を生産させていた。
住んでいる場所も完全に分け隔てられており、エターナルはボルテックスというまさにユートピアを具現化させたような豊かな土地に住み、獣人たちは荒廃した土地に住んでいた。

獣人たちはボルテックスの中に入ることすらできなかったのですが、ショーンコネリー演じる獣人ゼッドが偶然ボルテックスに紛れ込んでしまいます。
ゼッドの侵入によってエターナルとボルテックスの秘密が徐々に解き明かされていくというストーリーです。

一見すると理想郷のボルテックスなのですが実は大きな問題を抱えていました。
それは死ぬことがなく刺激のない毎日で退屈して無気力症候群のような状態になってしまう人々の増加です。
そのせいで労働力不足になり、獣人を使役して食料を生産させなければならなくなっていたのです。

この映画を見た時、私は手塚治虫の『火の鳥』を思い出しました。
あれも人の生死をテーマにした作品ですが、特に未来編はザルドスに似通った面があります。
未来編で登場するメガロポリスはまさにボルッテクスのような場所で人工知能によって統制されており、平和な日々が続き人々が無気力になってしまっていました。
火の鳥のほうがもっと大きな時間軸とテーマで展開されている話なので、またいつかブログで紹介したいと思います。

この理想郷ボルテックスと不老不死のエターナルの設定は中々面白いです。
エターナルの生死と年齢はすべて人工知能で制御されており、罪を犯した者はその罪に相当する分だけ老化するという仕組みです。
重罪人は刑務所のような場所に入れられるのですがそこは老人だらけです(笑)
また共産主義的な社会でもあり、エターナルの人々はすべて平等に食料が配給され労働時間も平等に与えられます。
これらの社会システムは全て人工知能によって制御されています。

さらにエターナルの人々は三大欲求(食欲・睡眠欲・性欲)というのものを持っていません。
そのような欲望をもつのは野蛮なことだと考えており、侵入してきたゼッドに対しても動物を見るような目つきでした。
欲求まで人工知能に管理されており、人工知能の決定にエターナルは逆らうことができません。

仮初の理想郷だったボルテックスもゼッドの侵入によって次々と問題が浮き彫りになっていきます。
ゼッドのことを知るうちに欲望をもてることや死ねることをうらやましがる人々まで現れ始めます。

火の鳥のメガロポリスは核戦争で消滅するのですが、ボルテックスも最後はゼッドが人工知能を破壊し、獣人たちが乱入することで消滅します。
ボルテックスが何故誕生し、ボルテックスに入れないはずの獣人ゼッドが何故入れてしまったのか最後にすべてが明かされます。

現実の世界でもユートピアを目指したEUが崩壊しつつあります。
ユートピアとは何なのかを考えさせてくれる良作です。