「…ふふふ、戦いには負けたケド、向こうとの糸は切れたアル」
「ゲホッ、ああクソ、あの蛇野郎ゼッテー許さねえ」
「残り2人は死んじまったみたいアル、あとは2人で生きてくしかないネ」
「…お前、裏切る気か?」
「むしろそれしか無いアル。これが狙いだったネ、あんさんの糸も切っといてやったアルネ」
「そりゃどーも。」
「これが、海アルカ」
「…結構きれーなんだな、もっと汚いかと」
「あとアニメももっとみたいネ」
「…まあ、あのナントカボール?ってやつは面白かった」
「また見るネー!今の私たちはただの人間アル、また向こうに見つかったらタダですまないネ」
「どーやって暮らすんだよ…」
「問題なしアル。ちょちょいのちょいネ」
会話文のみの手抜き文章申し訳ないです
http://jeison.biz/casphy/bbs/read.php?cate=novel&mode=thread&no=583&res=n50
準備スレ立てました。
「歩歩歩!!聞いたか?修学旅行の話」
「ついさっき授業でやってたじゃねえか」
「三人で回ろうぜ!俺と歩とオリ」
「は?」
ピシ、とその場の空気が固まった、昼過ぎの頃。
どうやら歩もオリヴィエも喧嘩は長引かせるほうであったため、あれから二週間経った今日でも、まだ仲直りはしていなかった。
歩はオリヴィエのことを「ここまで巻き込んでおいて都合の悪いことは隠そうとするやつ」と思ってしまった事が発端だ。歩はそういう人間が一番嫌いである。
一方オリヴィエは一般的に言う「口下手」であるため、大切なことを何一つ伝えられなかった事が原因だ。本来魔界には人間にとって毒である瘴気が溢れている。そのため歩の同行を拒否した訳だが、それがどうやら悪いように捉えられてしまった。
つまりお互いがお互いに悪いところはあったのだが、人一倍頑固な二人はなかなかそれを認められなかった。
「お、おい…なんだよ喧嘩でもしたのか?」
「…田中、もうこの話は絶対にするなよ」
「…」
田中はおおかた予想はついていた。田中の得意技は並外れた観察眼である。ついでにひかりからも聞いていた。
歩は年単位で知っているし、オリヴィエも話しているうちにあまり口が上手い方ではないと気付いていた。
しかし、あまり友達ができる性格ではない歩にできた友人なのだ、このままというのはもったいない。
(何よりひかりちゃんに頼まれたからな!)
理由の八割がそれというのは余談である。
「シュウガク旅行、か」
「ああ。数日間他県へ移動するらしい」
オリヴィエとアポピスは、二人でテーブルを囲んでいた。言わずもがな、歩はもう部屋にこもってしまっている。
アポピスは勿論、ふたりの喧嘩に気付いていた。
アポピスはどちらかと言えばオリヴィエ寄りの神であるし、オリヴィエが歩を拒否した目的も知っている。
しかしアポピスは完全に放っておくことにした。この問題は二人で解決すべきだと考えているし、さすがに戦闘に支障が出始めたら手を貸すつもりであるが、たぶん何とかなるだろう、と多少楽観的であった。
オリヴィエと歩がいないのなら、こちらに敵が来ることもないだろう。アポピスは「ほぼ何も知らない」に等しいのだ。突如蘇らせられ、操られ、戦わさせられた。
自身が死ぬ前のことを思い出そうとは思わないが、一度ただ手足を動かす人形と化したのも確かなことだ。
自分をその呪縛から救い出してくれたのもオリヴィエである。そして、行き先のない自分に帰る場所を与えてくれたのは歩だ。
だから、アポピスにとっては、二人には是非とも仲直りしてもらいたい。最も、アポピスにとっては喧嘩する前の二人を知らないのだが。
「ったく、何が修学旅行だよ」
俺はベッドの上で、大きな溜め息を吐いた。
本当なら楽しいイベントだったのだろうが、色々事情があり全く楽しみを感じない。
ここ2週間、アイツとは一切口を聞いていない。
まさか、あんな自分勝手な奴だとは思わなかった。
ここまで俺を巻き込んでおいて、何様のつもりだよ!!
あぁ、考えるだけで腹が立つ。
「···しおりでも見とくか···」
ゆっくりと起き上がり、鞄の中のファイルからしおりを取り出し、いそいそと机へ向かう。
机の上にしおりを広げ、ペンを持った。
「行き先は大阪か····」
去年の先輩らは豪華にオーストラリアへ行ったそうだ。
が、その時に頑張り過ぎてしまい今年の予算があまり残らなかったらしい。
そのせいで俺たちの行き先は国内になってしまった。
「まぁ女子があそこまで反発するのも無理ないよなぁ···」
今日のホームルームでの修学旅行の説明は大荒れだった。
行き先が大阪と発表された瞬間、一気にブーイングが飛び、
女子は不満気な顔をして何故去年とここまで違うのかを先生に問い詰め、
男子は怒りを抑えられず机をひっくり返したり椅子を投げたり大変だった。
窓ガラスも1枚割れた。
挙げ句の果てに高校のホームルームで校長、教頭が召喚されるという異例の事態になった。
危うく俺たちのクラスだけ修学旅行に連れていってもらえなさそうになったが、
学級委員の必死の謝罪によってそれは免れた。
「あそこまでやるほどの事じゃないだろ···」
あの光景を思い出し、苦笑しながら次のページを捲った。
次のページには、大阪の観光名所マップと、観光の際のグループについての説明が記載されていた。
「おーっ···大阪って通天閣と大阪城だけじゃないんだな」
生まれてこの方大阪に行ったことがなかったので、
勝手なイメージで観光する場所と言えば通天閣と大阪城だけだと思っていたが、どうやらそうではないらしい。
「この道頓堀ってのは···あぁ、グリコの看板があるとこだな。この天保山ってのは日本一低い山なのか···えっ?標高4.23mしかないの?」
こうしてマップに記載された名所の説明を読むだけでも結構面白い。
これも旅行の醍醐味と言えるだろう。
「おー、何か面白そうだなぁ」
正直俺も修学旅行の行き先が大阪であることが不満だったが、そうでもなくなってきた。
「それじゃ、行ってくる」
「ああ、忘れ物は無いな?
家の管理なら任せておけ。家事炊事完璧だ」
朝、まだ冷たい空気が肌を刺す。
集合場所は学校前だ。そこからバス、新幹線と、乗り換えて大阪へ向かう。
「おい、オリヴィエ。ハンカチ」
「…ああ」
そこからの会話は無かった。気まずい雰囲気が、何となく歩幅を小さくさせている。ような気がする。
歩は、これもあと2時間近くの辛抱だ、と気持ちを切り替えた。バスには30分近く、新幹線からは1時間半はかかるが、オリヴィエとの席は離しておいた。因みに、オリヴィエの周囲は女子ばかりである。歩はひそかにざまあみろと思った。
「おはよう、クラスメイトの皆様。今日は実に素晴らしい朝だろう?あともう少し太陽が顔を出してくれればとても素晴らしい朝になったのだが、ゴホン!今委員長から早くしろのサインが出てね。私の素晴らしいスピーチは中略しよう。
さて諸君!今日は素晴らしい学校行事!一生に3回、いやもしかすると4回あるかもしれない修学旅行だ!
去年とは違って不満たっぷりなクラスメイトもいるだろう。しかし!この私が!ここにいる全員が!この修学旅行を、この学校で、君たちの人生で!最も素晴らしいものにしてみせようではないか!
…本当はまだまだ言いたいことはあるが、長すぎるとうんざりしてしまうだろうからね。この私の素晴らしいスピーチはここで終らせていただこう」
秋山先生がキザっぽく例をする。
全体から拍手が響き渡る。その後、比較的短めな先生方からのお言葉を頂いて、修学旅行はスタートした。
「はあ…」
「おーい歩、ため息なんかついてどうした?」
「…はあ…」
「人の顔見てため息つくなよ、失礼だろー」
田中が口元を尖らせる。お前がやっても全然可愛くない、と言おうとしたが、その代わりにため息を吐いた。さっきからため息しかついていない。
せっかくの修学旅行なのに、全く楽しめていない。再度、ため息をつく。幸せがダダ漏れだ。
「お?俺あっちの方いくわ!」
「あっ…おい田中、」
自由なやつだ。
俺も田中を追いかけようとした、その時だった。
どぅん、と。
空気が大きく揺れる。
「_______!!!!」
とてつもなく高い音が、空気をビリビリと震わせる。頭が割れそうだ。
続いて巨大な影。トカゲのような禍々しい色の巨大生物が、コンクリートを割り、暴れていた。尻尾の炎が、赤く輝いていた。
「なっ…あっちには田中が!!オリヴィエに…っ、」
スマホを取り出そうとして、止めた。今あいつに頼って何になる。
あいつはただの嘘吐きじゃないか。適当な時に適当な言葉を言って、肝心な時には何も告げずにどこかへ消える。
「っ…」
それでも、友達は放っておけない。歩はその巨大トカゲの方へ走り出した。
「あれは…サラマンダー?」
周囲の人間が逃げる中で、オリヴィエはその影を見つめていた。オリヴィエの知る中では、サラマンダーは知能が高く、ああいった風には暴れない筈だ。まるで、何かに悶え苦しんでいるかのような__
ついでに、あんなに大きくない。
「…っち、」
舌打ちをひとつ打って、オリヴィエは走り出した。歩がいない以上、自分だけで何とかするしかない。
「うわっ…!?何だ、目の前でコンクリが」
「田中ぁ!!こっちだ、逃げろ!!」
「お、おい歩!!これ何なんだよ!」
田中にはあの化物が見えていない。
「歩!!」
「オリヴィエ、」
「…、いいか歩!サラマンダーは目が…」
言いかけた途端、歩とオリヴィエの間に尻尾が落ちる。オリヴィエは苦々しい顔で金色のレイピアを構えた。
「こっちだ、サラマンダー!」
オリヴィエがそう叫んだ途端、サラマンダーの爪が、オリヴィエに襲いかかる。
オリヴィエはそれを辛うじて避けたが、左腕に掠った。赤色の血が流れる。
「オリヴィエ!!」
「っ!!歩っ、」
歩の声の方向に、サラマンダーの爪が襲いかかった。オリヴィエは尻尾を飛び越えると、歩の方へ走る。
駄目だ、間に合わない。
ぴた、とサラマンダーの動きが止まる。
サラマンダーはまるで何かに抗うかのように、体を動かし始めた。
「____!!____!!!!」
歩は、オリヴィエの方を見た。左腕から滴る、オリヴィエの血。
もしかして、もしかしなくても、オリヴィエがピンチだ。田中は友人で、親友だ。それと同じように、オリヴィエだって友達だ。十数年生きたた中でできた、数少ない友達。
「オリヴィエ!!オリヴィエ・ド・ニナータ!契約に従え!!」
「!!…了解した!」
オリヴィエが、歩に手を触れる。黒色の炎が歩の足元から吹き出して、渦を巻く。歩の髪は灰色に、片目の色は蒼色に。
『歩』
「ああ、分かってる」
歩の両手から炎が吹き出して、それが剣に形作られる。歩の両手に、身の丈ほどもある大剣が握られた。歩はそれを構える。
サラマンダーが、歩の方を向いた。
「__いくぞ!!」
歩が大剣を振り下ろす。
サラマンダーが咆哮をあげた。