夜中、私は珍しく車を運転していた。
携帯の電池も切れてしまった。家族は心配しているだろう。
山道を走り続けると、街灯のない道にぽつんと光が現れた。
公衆電話だ。
私は公衆電話の横に車を止めて、ドアを開けたまま公衆電話に入った。
家族に電話を終えて、車の中に戻ってドアを閉めたとき、耳元で子供の笑い声がした。
ばっと後ろを振り返ると、ガラスに小さな手形がついている。慌ててゴシゴシ擦って消して、少しほっとした。
…待って。
私は手形を「車の中から消した」。そして私の耳元で声がしたのはついさっき。
まだ中にいる。