「……」
一人になった部屋の中で、君はしばらくの間ボー然としていたのだった。……それからさらに数日後の朝。
「おはようございます」
玄関を開け、いつものようにあいさつをする。
すると、奥の方からパタパタという足音が聞こえてきた。
「おぉ、君か。ちょうど呼びに行こうと思っていたところだ」
(誰だ?おとうさん?)
「どうかされたんですか?」
「それがな……」
リビングに入ると、そこには寝ている君の姿があった。
「おい、起きないか!」
そう言って体を揺するが、反応はない。
振り返るとお父さんは消えていた。
「仕方ない……」
俺はそう言って立ち上がる。
そしてそのままキッチンへと向かった。
数分後……。
トン、トン、トン。包丁の音だけが響く。
やがて料理ができあがったのか、皿に盛り付けて運んでくる俺がいた。
「さあ、できたぞ。冷めない内に食べるんだ」
「うぅん……あれ?どうしてあなたが……」
「やっと起きたか。ほら、早く座れ」
「は、はい……」
君は言われるままに席に着く。
「いただきます」
「い、いただきます」
パクッ。
「おいしい!」「そうか、なら良かった」
「あの、ところでどうしてここに?」
「何言っているんだ。ここはお前の家だろう?」
「いえ、私の家はもっとボロくて――」
そこまで言って、君は気が付いた。
「まさか、これって夢なんですか!?」
「その通りだ。ようやくわかったようだな」
「ということは、私は今眠っているということですか?」
「そういうことだな」
「でも、それにしては感覚がリアルすぎませんか?」
「まあ、細かいことは気にするな」
「はぁ……」
「とにかく、今日は一日ゆっくり休めばいい」
「はい、わかりました」
「それじゃあ、俺は仕事に行って来る」
「いってらっしゃい」
「あぁ、行ってきます」……こうして、幸せな休日は過ぎていった。
「ピンポーン!」チャイムが鳴る。
ドアを開けると、そこには見覚えのある顔があった。
「お久しぶりです!」
そう言って元気よく挨拶してくる俺。
「俺?ど、どうしてここに?」
「お見舞いに来ちゃいました♪」
そう言う俺の手にはお土産らしきものが入った袋が握られていた。