「そうか。ならば、私はもう何も言わぬ。」
こうして、有栖と鎌倉武士たちは手を取り合い、鎌倉武士を異世界へと導く魔法陣を作りました。北条政子をこの世界に残したまま。
やがて、魔法陣から光の柱が立ち上り、鎌倉武士たちは異世界へと旅立っていった。
すると、霧雨はやみ、空は青く晴れてきました。
気がつくと北条政子はみすぼらしいあばら家にみすぼらしい服を着て立っていました。
鎌倉武士たちだけでなく、建物も、鎌倉幕府の一切合切が異世界へと旅立ってしまったのです。
ポカーンとする政子に、寝転んで尻をかいていた旦那がどなり散らします。
「おい隆子! お前、何やってんだよ!! 今すぐ金を持ってこい!!」
「えっ??」
「え? じゃねぇよ! 早く金を稼いで来いって言ってんのがわかんねーのか?!」
「でも私……」
「でもじゃねえ、つべこべ言ってないでとっとと行けや!!!」
「わかりました……」
「ったく、使えねえ嫁だよなぁ……」
「…………」
鎌倉時代に残った政子は、何故か「隆子」と呼ばれる貧乏な家の女房になっていたのです。それまでのことがまるで夢のようでした。