「ほーん」 恭子は、美香が獄卒の持ち物である大工道具のようなものに異常な興味を示していることに気付いた。
美香は木材を切る際の目印をつける「墨縄」に似た道具を取り出した。「墨縄」は墨の染みこんだ縄であり、これで木材に線をひく。
しかし、もちろん地獄の獄卒が持っている道具がそんな生易しいものであるはずがない。
それは「黒縄」、つまり焼けた黒金の縄なのである。
美香はこれでまず、カリフラワー状の頭の先からビクビク震えているペニスの尿道口まで、ひよこ餅の縦に焼けた線を入れた。
ひよこ餅は激しく振動するが、美香は意にも介さない。
横、横、縦、縦とテンポよく焼けた線を引いていく。
「美香さん、ひょっとしてあなた、『鬼滅の刃』のサイコロステーキぱいせんを再現しようとしてるの?」
「さすがお姉様。アニメを見た時からやりたくってやりたくって…」
線を引き終えた美香は、カリフラワー状のひよこ餅を立たせ、『華厳経』の文句を唱えると、
「デビルカッター!!」
と叫んで無数の三日月状の白い(空気でできた)刃物をひよこ餅に向かって飛ばした。
当然、ひよこ餅はサイコロ先輩と同様、いくつもの四角い肉の断片となって地面を転がっていった。