「なんだ、『ひよこ餅』を倒したっていうから、もっとできるのかと思ったが、ただのデクノボーじゃねえか」
セルシアは物足りなそうに笑いながら言った。
「避ける動作すらしなかったな。これでも『論武一如』の喧嘩師なのか、こいつ?」
黒うさぎも半笑いで不満を述べた。そして、叶姉妹の方を見た。
「ヒュー!ダイナマイト!!」
「ダッダーン!ボヨヨンボヨヨン。ダッダーン!ボヨヨンボヨヨン」
セルシアがふざけながら叶姉妹に近づいていった。
と、しばらく歩いてセルシアはピタリと止まってしまった。
「おい、どうしたセルシア?」黒うさぎが訊ねると、
セルシアは「ギ!ギ!ギ!…」と叫んでゆっくりと黒うさぎの方を振り向いた。
そして、そのまま雑巾が絞られるみたいにギュウゥーッッ!と捻じ曲がり、全身から大量の血を噴き出して、死んだ。
「セ、セルシア!」黒うさぎは後ろに飛退って防御体制に入った。
「あ、あいつ、まだ生きてるのか!?」
キョロキョロするが、もちろん、例の金髪の男は倒れたまま、ピクリとも動かない。
兵たちもあたりをキョロキョロ探すが、敵どころか小動物一匹すら見当たらなかった。