後天的な思考回路は勿論、親からだけでなく外部からの影響も大きい。
しかしそのオリジナルの思考回路は親の養育なしで得られるものではないことに変わりない。

成長過程においては常に不確定要素が働き、親との関わりがある以上親の養育の影響は絶対。
思考回路には外部と親、両方の影響が混在している。
その影響を受けた状態での親の養育の仕方に対する公平無私な評価は有り得ないだろう。

そして親が正しいとは限らないにもかかわらず子供は親の養育の仕方を
それ自体が立脚点のままだと否定することは絶対不可能という奇妙な結果が得られる。
というのも、子供という人間ごときがそのような当否を判断する術なんて持っていないから。
記憶喪失にでもならないかぎり、自分の意見をどれだけ正しいと思っていても、
神のみぞ知る絶対的真理との齟齬は免れない。

子供自身が自分の意見を「正しい」と判断することは不可能。
何故なら自分の意見を正しいものとする判断そのものが正しいかどうかを子供はまた判断しなければいけないから。
つまり無限ループである。

これは自己言及のパラドックス以外の何者でもない。
「お前の養育の仕方が悪いからこうなったんだ！」という発言自体が矛盾を孕むことになる。

たとえそういった思考回路が親からの養育なしで得られたとしても、
その場合親の養育の仕方に対する否定という行為と矛盾する。
なぜならそもそも否定の必要性がなくなるから。