2018/06/24(日) 14:52
―――その後は、明日からの簡単な打ち合わせをして、今日は帰ることになった。
「こういうときは何ていうんだっけ……あ、そうだ。失礼しまーす!」
私は、ガラガラで人が一人しかいない受付にお辞儀をして事務所を出る。
受付のお姉さんも、笑顔で返してくれた。
「お母さんに、事務所のこととか話さなきゃね……ん?」
このまままっすぐ家に帰ろうとしていると、後ろ……事務所の自動ドアが開く。
「あ……」
「たかぎさん!」
事務所から出てきたのは、高木菜月さんだった。
「美咲春菜……だったよね?」
「うん!」
よかった。名前、覚えててくれたんだ……。
「あなたは……」
「……ん?」
「……なんで、アイドルになろうと思ったの?」
高木さんからも、同じ質問が来るなんて……。
でも、何だか言葉に重みを感じて、一瞬だけ戸惑ってしまった。
「あ、えーと……」
軽く深呼吸をして、気持ちを整える。
「ファンのみんなに、笑顔を届けたいから……かな」
「ふぅん……」
また、そっけない態度で返された。いや、話は聞いてくれてると思うんだけど……
「あたしには、わからないな……」
そう言い残して、高木さんは逆の道を帰っていった。
わからない……どういうことなんだろう?