ひゅん、と軽い音をたててアポピスが杖を振るう。
大地が割れ、割れ目から禍々しいオーラが噴出した。オリヴィエは後ろに飛んでそれを避けると、周囲に炎を纏わせる。
オーラが形を変えて、巨大な蛇になりオリヴィエを襲った。
「くっ…」
炎が蛇にぶつかるが、蛇はまたオーラになると炎を避けた。
オリヴィエは地面の形をドーム状に変えて蛇を閉じ込める。一時的なものだ。
「チッ…アポピス。俺はお前を殺さない」
「……何故だ?」
「逆に聞くぞ。お前は何故死にたい?」
アポピスは、杖を剣の形に変え、それをオリヴィエへ向けた。
「…3000もの昔、私は太陽神ラーと戦った。そして、私は負けたのだ。
私は夜の力をラーに明け渡した後、ラーの剣で自害した…私はそこで終わる運命だったのだ。
…そして現世、この世にラーがいない時点で私に生きる意味は無い。この世界を滅ぼす気も無い」
アポピスは長い髪をたなびかせてオリヴィエは走る。オリヴィエは咄嗟にそれを避けたが、金色の剣はすぐ目と鼻の先まで迫っている。
「操られている私に自害することは許されていない。オリヴィエ、太陽の化身よ。私を殺すのだ。でなければ、この魔界も人間界も滅びることとるであろう」
闇色の目が、オリヴィエの琥珀色の目をすっと見た。
「なら教えてくれ。お前達の首謀者は誰だ」
「……それを教えることは、許可されていない」
ひゅん、と、アポピスが剣を振るった。