俳句の理念が「写生」だとすると、ラップの理念は「喧嘩」である

つまり、ラップは暗黒大陸アフリカに起源をもつ喧嘩をするための歌謡曲なのである
普通、素面の人間は単なる散文で喧嘩をすることはできない
情報伝達の手段にすぎない平叙文で喧嘩することができる人間は、既に彼の存在そのものが過剰だったのである

ラップは、そのような「喧嘩エンジン」を積んでいない普通の人間が酒や薬で脳の機構を電気的化学的に損なうことなく喧嘩をするための方法である

日本最初のラップは、YMOの「ラップ現象」であると言われているが、そこに「喧嘩」の要素はなく、心霊現象の「ラップ」を音楽ジャンルの「ラップ」と重ねたものである
そのせいか、日本のラップは「喧嘩」というよりは「シャーマニズム」に近い要素があるといえよう