この作品でも「北日本」は社会主義国です。大局を要領よくまとめた記述が登場人物の思考として提示され、それに対する標準的な感情も具体的な状況の中で添えられています。しかしいかんせん未完。
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「…この国は一体、どうなっちまうんだろうな」
彼の祖国である大日本帝国が地図より消えて8年。
今は北日本共和国と名を変えたこの国は、宗主国であるソビエト連邦の主導の下、急速に形を変えつつあった。
共産主義の台等、秘密警察や政治委員による監視社会、検閲された情報と荒廃した東欧からやって来る無数の移民達。
そして共和国各地に駐屯するソビエト連邦軍と彼らの傀儡に過ぎない北日本政府。
そこまで考えて男は頭を振る。
一介の兵士に過ぎない自分が考える事ではない。自分は今までと同じように軍人としての職務を果たすだけだ。例え名前が変わっても、今はこの国が自分の祖国であり、守るべき対象なのは変わらない。
…変わらないはずだ。
男は自分の目に写る光景がこれからの国の未来を暗示する、酷く不吉なものに思えてならなかった。