「確かに小説は書かれているが、一方でそれらはなかなか売れなくなっているし、他方ではいかなる小説も、実のところ大雑把に言ってプルースト以後は『抜きん出る』ことがなく、大小説、あるいは小説の記念碑の域に達することがなくなっているように思われる。だから歴史的には、こんにち小説は可能か、という問いは正当なものである。しかし素朴に言えば、私はこうした問いを自らに提起しない。さしあたり、私は小説を――『私の』小説を――戦術的に考えることはしないつもりだ。」(『小説の準備』)