「パパ活」
風がひゅーひゅー吹いていた。
とある山野の荒地に群生した【芒】が風で靡く。
のどかな風情を感じさせるはずのそれを、私は無視をしてを駆けていく。
心地良いはずの風は、私の体に反発して、活力を削り取っていく。
【パパ活】で募集した相手があんなに執拗だとは思わなかった。
最初は【善い】男性だと思った。
デートしてお礼をしてくれるっていう約束だったのに、契約に違反してご飯を食べてる最中にいきなり迫ってきた。
店内に響き渡るテーブルへの衝撃音。こぶし大をテーブルに叩きつけ私を威圧していた。
私はつい驚き店を出てしまった。
ガラス越しから確認したら頬張ったスパゲティが奴の口から溢れていた。
さらにその状態で私を見つめ、小走りに追ってきた。
私は身の危険を感じ疾走した。
【夫婦別姓】で結婚してるからって、愛に飢えてるって言われてついつい同情をしてしまった。
そんな余裕はないはずなのについ振り向く。
やつは食べかけのスペゲティを口から出しながらギョロッと目を合わせて私の後を追って来ていた。
なんでこんなの信用したんだろう...私は馬鹿だ...!
私にとって大事なのは援助ではなく、お礼だということ。
私がデートをしてあげるんだから!!!
それなのに。。。
良き【ガバナンス】を前提としたパパ活だったはずなのに!!!
気付くと地獄の鬼ごっこは終わりを迎える。
私が無我夢中で逃げ込んだ先は路地裏の行き止まり。
ついに【退路を断たれ】てしまった。
奴の口にスパゲッティはないようだ。
そのかわり鼻からスパゲッティを覗かせていた。
「契約違反よ!訴えてやる!」
スパゲッティは綺麗に一本ずつ左右の穴から出ている。
「そんな契約僕たちの愛の前では関係ないのさ」
奴が喋るとスパゲッティは振り子のように左右に揺れた。
「デートだけっていったでしょ!?」
男は目をカッと見開いた
「うるさい!!」
その瞬間、奴の鼻からスパゲッティが勢いよく飛び出した。
飛び出したスパゲッティは私の顔面にぶち当たり、一瞬視界が閉ざされた。
次に見える頃には何もかもが遅かった。
奴はもうすでに10cmほど手前に来てた。
「ね、これで一緒だね」
アーッ!