堂本香織です

94名無しさん
2022-03-28 16:48:01
ID:BHKtwitQ(sage)

しかし主人公優美の思いとは裏腹に、教室には不穏な空気が流れます。入学早々、となりの席の「壱城マリ」から親友の「花奈」を手を切れ、と言われるのです。さもないと、お前はボッチになる、と。
 
ところが、これから“いじめ”が始まるという段になって唐突に小説は中断されます。もちろん、これは昔、現代文学でよく見られた「宙吊り」などではなく、単に作者がその先を書けなくなってしまったのです。ネットの投稿小説では普遍的に見られる現象ですが、それがかえって“いじめ”というものの本質を際立たせています。
 
この小説では、そもそも「何がいじめを誘発したのか?」という具体的なエピソードが書かれていません。入学早々、いきなり隣の席の人間から「自分(マリ)を選ぶか親友(花奈)を選ぶか」という選択を迫られ、「未知の隣人よりも既知の親友を選ぶ」当然の選択をした結果、いじめのターゲットになったのです。しかし、いじめとはこのようなものではないでしょうか?何かそれらしいエピソードを描くよりも、「はじめに“いじめ”ありき」で、後からそれを実現する具体的な行動が出てくる。この方がはるかにリアルです。また、作者の目的がいじめを描く「いじめ小説」であるにもかかわらず、いじめが始まる前に小説が終了するというのもリアルです。作者にとっていじめは想像の外側にあったということでしょう。“いじめ”とは、想像界に開いた“穴”、そこから少しだけ現実界が垣間見えるような、そんな“穴”なのです。
 

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