堂本香織です

95名無しさん
2022-03-28 17:18:08
ID:BHKtwitQ(sage)

「想像界」「現実界」「象徴界」というのは、周知のごとく精神分析学の文脈でラカンが提出した概念です。ラカンはフロイトの思想を継承し、それを様々な概念装置で定式化し直した思想家であり、「想像界」はフロイトでいうと「意識」ないしは「自我」の世界、あるいはそれより少し無意識に近い「前意識」の世界に相当し、「現実界」は「無意識」の世界、それも無意識の奥底にあるような無数のエネルギーや力が何の秩序もなく渦巻いているような世界です。アリストテレスは物体を形や秩序を与える「形相」と、形を与えられる“素材”である「質料」が結合したものとして説明しましたが、「現実界」とは、一切の形相を欠いた「純粋質料」の世界であるといえます。「象徴界」とは、フロイトでいえば「超自我」の世界、社会的・歴史的に形成された秩序や制度、道徳や法の世界です。「言語」は当然、この世界に属します。アリストテレスの用語でいうならば「形相」の世界であるといってもいいでしょう。
 
ややこしい話ですが、このような構成からみると、我々が生きている「現実」は、「現実界」ではなく、むしろ「想像界」に属します。ただし、そこには「象徴界」の介入もあれば、至る所に「現実界」が垣間見える“穴”が開いているというわけです。
 
次にわれわれが参考とする小説は、我々の生きている想像界がいかに脆いものであるかを描写しつくした傑作です。
 

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