昔の話です。小学四年か五年のことだったと思います
私の祖母は絶えず猫を飼っていまして、その頃は黒い猫1匹を川辺で拾って飼っていました
ごんちゃん、という名前で5円玉みたいな目とツヤツヤの黒い毛並みが印象的でした
病気も怪我もなくすくすく育っていましたがごんちゃんは3歳の夏に車に轢かれて死んでしまいました
夏休み前、祖母の家に帰る約束を持ちかけるときに電話でこのことを聞きました。
祖母は広い家で帰りの遅い祖父と二人っきり。1つの小さくて大きな心の拠り所が無くなって彼女はさぞかし悲しかったのでしょう
電話口で祖母は涙声で息が荒く、痛々しいその姿がありありと目に浮かびました
それで帰省が無くなることはなく、私は祖母の家に泊まりに行くことになりました
祖母の家は私の住む東京と随分と離れた田舎です。車で両親と祖母の家まで走ります
8時間か6時間か寝れれば一瞬の時間ですが車に酔いやすい私にはとても長い時間のように感じられました。その日は爆睡でしたが。
さあ、着いたよ。と母が私を起こします。目を開けて車窓に顔を向けると寝る前にみたビルに囲まれた道とは大違いの緑という緑が膨らんでいて私は驚きました
多少夢うつつの状態でフラフラと荷物を祖母の家の玄関まで持っていきます。街灯も周りを照らすものもないため真っ暗でほとんど見えませんでした
玄関のドアを開けると突き当たりのドアから少し光が漏れ出ていてそれを頼りに私は荷物を置きました。
背を向けようとすると視線の端に何かを捉えて私は突き当たりのドアに振り返りました。黒か白かもわからない猫がこちらに歩いてきます。あ、猫だ…そう思い反射で猫に近づこうとすると後ろの玄関がガラッと開きました。母も荷物を置きにきたのです