吹雪は少し緊張しながらも、奥に進んでいくと、カウンターの後ろにいた女性が突然目を覚ました。女性は眠っていた釈迦入滅のポーズから、一瞬で座り上がり、微笑みながら吹雪を見つめました。

「あら、新人さん、ようこそ。吹雪さんですね。私は有栖と申します。今日からこの店でお手伝いしていただくのですね。」

吹雪は安堵のため息をついたと同時に、有栖さんの温かい笑顔に心が和みました。有栖さんの存在は、まるでその場所に居るすべての不安や緊張を包み込むようでした。

「はい、そうです。今日からよろしくお願いします。」

有栖さんは優雅な手つきでカウンターを回り、吹雪に近づいてきました。その目は優しさに満ち、吹雪を温かく迎えるような雰囲気を醸し出していました。

「吹雪さん、少し早く来すぎたのかしら？お店の開店まで時間がありますから、まずは少しリラックスしてください。コーヒーやお茶を用意いたしますわ。」

有栖さんの案内に従い、吹雪はカウンターに座り、暗闇から解放された店内を見回しました。ガラスケースに飾られたメイド服も、照明が当たることで優雅な輝きを放っています。

少しずつ店内は明るくなり、有栖さんが淹れてくれた香り高い紅茶の香りが漂ってきました。有栖さんは優雅な動作で紅茶を置き、吹雪と向き合いました。

「この場所、"Tea Room 有栖"は、新たな出会いと経験を楽しむための場所なのです。私たちメイドたちは、お客様に楽しい時間を提供し、心地よい空間を創り上げることが役割です。新人さんとして、きっと素敵な冒険が待っていることでしょう。」

吹雪は有栖さんの言葉に心が踊るのを感じました。彼女はこの場所での新たな始まりに胸が高鳴り、香織の支えや有栖さんの優しさに感謝の気持ちを抱きながら、自信を取り戻していました。

「有栖さん、ありがとうございます。私も、この場所で成長していけるように頑張りたいと思います。」

有栖さんの微笑みが広がり、店内に優しい光が満ちていきました。新たなステージでの冒険が、吹雪の前向きな成長を導くことになるのです。