~Responsibility of evolution~ リレー小説

6MIA bogey◆9T/T0pG8Qo
2018-03-18 12:20:10
ID:9aBmYQOM

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アトラクションのみがゆっくりと動く無人の遊園地の中、一人のガンスリンガーが立っている。
鍔が広く鎖の巻いてあるカウボーイハット、少ししわの寄った白色のシャツ、茶色のベスト、所々色あせたこれも茶色のズボン、上半身を覆うボロボロのマント、そして二本のガンベルト、ホルスターが左にある物と右にある物。
その姿形はいかにも西部劇と言った体で、周囲の風景とかけ離れ場違いな印象を与える。

「アリス、準備はいいか?」

耳に付いた無線で男が問いかけた相手は約150m離れ、IDTの制式装備を着た女―――女性装備特有の胸の膨らみでそれと分かる―――が、男に向けた対人狙撃銃PGMウルティマラティオのスコープを覗いている。
少し上を見上げれば、少し遠くに黒色の静音ステルスヘリが飛行しており、哨戒に当たっている。

「任務中はTACネームで呼んでよ、"キルショット"って……大体こっちはこんなヘンテコなショボい城でずーっと狙って、撃っての繰り返しするのよ?」
「Tシャツを売ろう、"EAT,SLEEP,AIM & SHOOT,REPEAT"って」

アメリカはテキサス内の遊園地において1人の機械人間が"ウィルス"に感染、さらに同時刻に居合わせた10人ほどの機械人間も感染し、レストラン内の客を人質に立てこもったとの通報が入ったのは約10分ほど前。
これに対してIDTが送り込んだのがこの二人、TACネーム"デスチェイン"、ジューダス・バッドタトゥー、そしてTACネーム"キルショット"、アリーシャ"アリス"ケインである。

「まず人質を外に出せればいいんだが、そうもいかないよなぁ」
「どっちもワームホール持ちの癖に、こっちは開くのに1分、そっちは半径10cmだしね、いつも通り一、二発ぶち込んでやるところから始める?」
「飛び出してくれれば良いけどな。じゃあ行くぞ、1345、作戦開始」

その声が終わるか終わらないか、といったところで、キルショットが撃った7.62×51mm NATO弾がレストランの窓を叩き割り、1人の機械人間の頭を貫く。
中に居る機械人間が一斉に振り向くと、その視線の先にジューダスを捉える。
目尻から裂けるのではないか、と思わせるほど見開かれ、白目が赤く見えるほどに血走った目が合わせて22個、その視線がジューダスのそれと絡み合い交錯する。
最初の機械人間が窓を突き破って外に飛び出し、さらに次々と別の窓から、割れてガラスも残らない窓から、飛び出してジューダスへの距離50mを疾駆する。
ジューダス当人はいたって冷静で、僅かな笑みすら浮かべている。視線が機械人間を舐め回すように捉え、一瞬のうちにその視線の網が全てに対して張り巡らされる。手が痙攣するかのように震え、『GO!』の指令を待つ。

一人目が銃の有効射程距離に到達。目の色が今までの物とはうって変わり、億の鷹の目を重ね合わせたかのような鋭い視線が放たれる。面白がっているような笑みに、冷酷とも取れるような色が混ざる。
精神が「ジューダス・バッドタトゥー」としての意識から「Deathchain」のそれへとシフトした。
目にも見えぬ速さで手が二つのホルスターからリボルバー、右の「アルファ」と左の「オメガ」を抜く。2人の相手の眉間へ44マグナムを正確に撃ち込み、同時にキルショットの狙撃が別の機械人間の頭を貫く。

銃声が響き、装甲が弾け飛ぶ。統制なく突進する機械人間たちを、デスチェインとキルショットの二人は完全に調和のとれた、今まで幾度となく繰り返されたいつも通りの動きで迎え撃っている。

最後の一人、右手にクレーバーを持った者がそのクレーバーを振りかざして突進する。
デスチェインは右手首を撃ち飛ばし、最後に残った「オメガ」の一発。左膝を撃ち砕いた。
1メートル半ほどの距離。埋めようと機械人間がもがくが、哀れそこには少しの力もなく、ただ地を掻く。
悠々と頭に照準を合わせ、撃鉄を起こす。

「バーン」

と、ジューダスが言うと同時に、キルショットの一射が頭を吹き飛ばした。

「デスチェインより上空班、任務終了だ。後始末したら帰るよ」

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