「…あ、」
桃太郎は声をもらした。
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今から何年も昔のことだ。
自分は捨て子だったらしい。川辺の近くで布にくるまって、そこに置いてあった。そしてそこに、自分の頭と同じくらいの大きさの桃が、すぐ横に落ちていたそうだ。
犬と猿とキジは鬼との戦いで死んでしまった。あとは自分しか残されていない。
鬼ヶ島というからどれだけ禍々しいのかと思えば、拍子抜けするほど普通の家だ。強いていえば、あちこちから血の臭いが…漂ってくるだけ。
少しづつ、おかしくなってく気がした。あるいは、
もうここには誰1人いない。
ひときわ目立つ扉を開けると、大量の財宝がそこにあった。
財宝を持ち帰る前に、せめてここまで着いてきてくれた仲間達を弔ってやりたいと思い、桃太郎は引き返すことにした。
「え、」
振り返ると、
そこには大量の人間が転がっていた。
全員、血を流して倒れている。
どうしてこんなところに。
人間は自分以外には居ないはずだと思った。
「…あ、」
それは本当に人間だったか?
いや違う。
自分が鬼だと思って殺したものは何だったか?
「…ああ、」
自分の両手を見ると、真っ赤な血で濡れていた。
「ああああああぁああああああぁぁ!!!」
アレが鬼だ。
お前はアレを殺せ。
アレは人間じゃない。
アレが鬼だ。
何度も何度もそう教えられて、そのうち自分の姿も分からなくなって。
人間が鬼だとそう思って、自分は、人間を、
桃太郎は我武者羅に刀に手を伸ばしてそれを腹に突き立てた。