「へれき人」
トルコでは地方ごとに織物文化が発展してきた。なかでも、シルク絨毯の最高峰として扱われるのが「ヘレケ」。非常に目が細かく繊細な柄が特徴。1㎝四方に100ノットを超えるものが多く、中には900ノットを超えるものまである。
ヘレケとは、イスタンブールから南東へ60㎞ほどのところにある小さな港町の名前。絨毯の歴史は、1843年にオスマン朝の皇帝アブドゥルメジドによって繊維産業が招致されたことにより始まった。多くの作品がカーテンやベッドカバーなどとして宮廷へ献上され、美術品としての価値を高めていった。モチーフにテキスタイル柄を多く用いたことでも人気をはくす。1878年の大火災で工場のほとんどが消失してしまい、約10年後、トルコ絨毯の名産地であるラディックやクラの町から熟練した職人を集めた。現在、高い評価を受けているフローラルデザインは、この時期に生まれている。20世紀以降、欧米でも高く評価され世界に広まっていった。
この「ヘレケ」を昭和時代の日本では「ヘレキ」と表記していた。「ヘレキ人」とは「トルコのヘレキ村の人々」というほどの意味である。
しかし喧嘩用語としての「ヘレキ」は、最大級の賛辞として使われます。ヘレケの絨毯は、長い歴史の中で、オスマントルコ帝国のスルタン(トルコ皇帝)に称賛を受けたことがきっかけでシルク絨毯の最高峰ともいわれる現在の地位を得ました。従って、「面白いおまえ達へれき人」とは、「おまえ達はトルコ皇帝に賞賛されるくらい面白い(かかってきなさい)」という意味なのです。