【無精床(ぶしょうどこ)】
落語の演目の一つ。
親方も小僧も無精きわまりない無茶苦茶な床屋に、偶然入ってしまった男の災難ぶりを描いた滑稽噺。
あらすじ
行きつけの床屋が混んでいるので、代わりに入った床屋がたいへんな店。
掃除はしていないし蜘蛛の巣だらけ、ハサミも剃刀も錆だらけ。
肝心の主人たるや無愛想でぐうたらそのもの……
顔に乗せた手拭いが熱すぎる。
「熱いよ!親方!」
「こっちも熱くって持ってられねえから、お前の顔に載せたんだ」
次は頭を濡らしてもらおうと頼むと、
「水桶にボウフラがわいているから」
「おい親方、ボウフラなんか湧いてるのかよ!」
「これぁ飼ってんだよ。水桶をこう叩くだろ。そら、沈んだ。かわいいだろ。その間に頭ぬらしとけ」
非衛生極まりない。
頭を剃る段になると、小僧に剃らせようとする。
「おい大丈夫かい?」
「何言ってやがんでえ。うちの小僧にも稽古させねえといけねえ」
「俺は稽古台か!」
しぶしぶ剃刀を当てさせると、案の定痛くてたまらない。
聞くと下駄を削った剃刀で剃っているという。呆れて音を上げた客、剃刀も親方に代わってもらうが、親方は客の頭がデコボコで剃りにくいとこぼす始末。
しかも側に控えて見学する小僧にいちいち指図する。
「おい、俺の手元よく見ておけ……何見てんだ? 何ぃ、表に角兵衛獅子が通っている!? そんなもの見てんじゃねえよ!」
と小言の連続。
そのうち親方、手を滑らせる。
「あ痛ッ! ああっ、血が出ちまったじゃあねえか。親方! どうしてくれるんだ!」
「なあに、縫うほどのものじゃねえ」