試合が終わったなんて信じられなかった。
1―1で迎えた延長11回裏2死一塁。東海大相模のエース小泉圭市君(3年)は指を2本立ててアウト数を確認してからキャッチャーミットを見つめた。最初の2球は少し外れてカウント0―2。「次はストライクだ」
外角直球。真ん中ぎみに入った球を打たれた。打球は右へ。右翼手の兵動悟君(2年)が追いかける。「うち取った」と小泉君は思った。が、球は右翼線近くに流れて芝の上に転がった。「うそだ」。急いで本塁へカバーに入ったが、返球より先に慶応の走者が本塁に転がり込んだ。サヨナラ負け。拳を握りしめて地面にうずくまった。
165球投げて、許した安打はわずか4本。直球中心に組み立てて、11回のうち5回は三者凡退に抑えた。慶応の打者が口々に「打てないと思った」とうなる内容だった。直球は伸び、変化球も切れる。制球が定まらずに打ち込まれ2回戦で敗退した今春の甲子園とは大違いだった。自分の投球が戻ってきたと感じていた。
今大会、エースとしての役割を果たせずにいた。「お前に任せた」と門馬敬治監督に言われて臨んだ桐蔭学園戦では、9点を奪われて8回で降板。気持ちが空回りしていた。準決勝は「今までやってきたことをぶつけるしかない」とだけ考えてマウンドに立った。
昨秋からエースナンバーをつけてきた。試合後、「背番号『1』には監督や仲間、周りの人々の思いが込められている。勝ちたかった」と話した。控室前で門馬監督に「すみません」と頭を下げた。「ベストピッチングだったぞ。自信もて」と言われ、泣きじゃくりながら握手を交わした。