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建ち並ぶ高層ビル、忙しそうに歩く人々、遠くの方に見える、城。一年ぶりの夏の国を、私は建物の屋上から見下ろしていた。
「すーごいところに飛ばしてくれたね緋翠さん......」
まさかこんな高いとこから入国するとは思ってなかったよ。
集合まではまだ丸一日あるので、とりあえずホテルで一泊することにした。そのためにはここから降りないと。
私は人気のない路地を見つけ、そこに向かって飛び降りた。
「空気床(エア・マット)!」
そして空中で唱えると、目に見えないけど空気のマットが表れて、着地の衝撃を取り除いてくれた。
「さてと、ホテル探そ」
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翌日、ホテルでしっかりと休んだ私は、目的地に向かった。集合場所は、囲まれた特別な区域だと書かれていたから、そこを探して歩いたり跳んだり買い物をしたりしていると、しばらくしてそこにたどり着いた。
「わぁ、なんか見たことあると思ったら」
途中で買ったお菓子を口に放り込み、甘い甘い砂糖のついた指をなめる。
「ここ、魔王と闘った場所じゃない」