~手紙より集まりし者達~Worship of nothingness (連続リレー小説)

31J◆kZDFwAt8do
2016-11-20 00:30:49
ID:H5IbE/xs

「そうか。所詮美味い蜜吸った勝ち組共は俺の事なんか知らねえって訳か。」

ボロ布の男は、有刺鉄線が貼られていない扉へもたれ掛かる。その寂しい瞳で俺を睨んだ。
それに対し、自分はその男に向かって針を飛ばす。

「同情が欲しいのか。」

瞬間、彼は目付きが変わった。

「あ?何間抜けな事を抜かしてるんだお前。」

彼の目が眉で隠れる。明らかに苛立ちを覚えているその顔を無視して、俺は後ろを振り返る。そこには数名の人間が立っていた。一人は少女、この姿は記憶にある。瑠璃だ。もう二人は知らない。
ペスト医師の仮面を着けた男の隣にいる黒い奴はなにやら話をしているようだが。

「待ってましたよ、討伐隊の皆さん…」

その話を黙々と聞く自分。この黒いコートはファレルというらしい。
一方、ペスト医師みたいな奴はその柔らかそうな物腰を変えず、綺麗な姿勢でその話を聞いている。
瑠璃はどうやら困惑しているようだが、そのファレルとかいう男の話を妨げるようにさっきのボロ布の男は口を挟む。

「それじゃあよ、何でここはフェンスで囲まれてんだ?」

彼の質問に、ファレルという男は丁寧に答えた。その回答によると、この爆心地の中央に矢文が突き刺さっていたらしく、その内容は[機関員が討伐隊の動きに気づいた]というものだった。
機関が俺達に気付いた?今こうして寄り集まってる俺達の動きを?こんな嘘を練り混ぜたような話を信じるほど俺は馬鹿じゃない。
ファレルとかいう男はその矢文を読み終えると、その読み終えた紙を折り畳んでポケットに入れようとする。
だが、彼の矢文を握った右手がポケットに突っ込まれる前に俺は複合剣のファングを展開し、左手でファレルの顔面へ突きつけた。

「おっと、これは。」

「その矢文の出所は分かってるのか。機関が俺達を把握したところで何故この爆心地にいる化物達を殺す必要がある。全て答えろ。答えない限りこの凶器は下ろさない。」

ファレルの、やけに整った顔は相変わらず微笑したままだ。俺は左手でファングを突き付けながら、複合剣本体を握ったままの右手で腰の護身銃へ指を掛ける。この護身銃はフリントロック式の安価な小型鉄砲だ。
震える事のない剣先を舐めるように眺めながら、ファレルはこちらをに睨んできた。
険悪な空気、それに割り込むように隣から声が差し込む。

「おーおー、怖い怖い。流石は元傭兵だな、荒事慣れしてる。」

ボロ布の男だ、それに続いてペスト医師の仮面の奴も言葉を投げてきた。

「少し冷静になりましょう。いくら怪しいとはいえ、貴方も自宅にやってきた初対面の配達人を怪しいからと言って殺したりはしないでしょう。」

一言ずつ、丁寧に言葉を並べてきた。

「という事らしいので、その剣を下げてはくれませんかね?」

調子に乗ったようにファレルという奴は俺に言ってきた。

「良いだろう、剣は下げてやる。」

俺は素直にその言葉に従う。
左手に握ったファングを複合剣に戻し、直ぐ様護身銃の銃口をファレルへ向けた。

「さぁ、さっきの俺の質問を答えろ。」

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