~手紙より集まりし者達~Worship of nothingness (連続リレー小説)

36“夏”の足音 -Lumina phase-
2016-11-20 00:34:16
ID:H5IbE/xs

時に紡がれる言葉が状況を打破することはある。時に大胆な行動が全てを覆すこともある。確かにJの牽制は清水に一石投じる結果となったろう。だが、これは__大岩を転がし入れたも同然ではなかろうか? 怪しいところがなかった訳ではないのだが、流石に抜刀というのは……まったく、反応に困る度合いを存分に引き揚げてくれる。このままでは有益な情報も引き出すのが困難だろう、一先ず剣だけでも下ろさせようと口を開くか__マスクの奥に迷いの滲む丁度その時、ボロ布が空気を打ち壊しながら土足で侵入してきた。
彼の空気を読まない姿勢には、時々助けられてしまうものだ。少々のストレスは言い苦しい言葉の潤滑油。

「少し冷静になりましょう。いくら怪しいとはいえ、貴方だって、自宅にやってきた初対面の配達人を怪しいからと言って殺したりはしないでしょう?」

それに、一つ付け加えて言っておこう。「矢文の内容は嘘を吐いていない」と。仮に彼が復興を行うと騙っていたとしてだ、その場合もやはり、我々の動きは確実に気付かれている。つまり、ここでどう足掻いたところで__彼を殺めたところで、迷宮入りもいいところ。ならば騙されてやるのも一興だろう?
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この際、Jがトンチのように銃を突き付けたことは突っ込まないでおこう。尋問の果てにファレルから引き出せた情報も、凡そ予想から外れたことは見当たらなかった。魔王討伐の功として、働いた分を遥かに超えたものを支払われていたと記憶している。だから報酬も魅力的には感じられなかった。むしろ申し訳ないくらいのものだ。
しかし、これ以上問題が増えるのは頂けない。此処での会議も打ち止めだ。

「決まりですね。」

自分でも半ば強引だとは思う締め方にはなったが。仕事は手早く終わらせてしまった方が良い。いつの間にハーシーは扉の前まで歩き進んでいた。好奇心と気怠さが混じった声が前進を促してくる。……一応此方からも仕掛けてみるか。

「恐らくですが……此処は非常に危険度が高い。当然扉には施錠が施されていると考えるべきです。ファレルさん、貴方は依頼を預かってきたと仰っていましたが、鍵などはお持ちでしょうか?また、出現する魔物を把握していらっしゃるのなら、その特徴や警戒すべき点もご教授願いたい。」

もちろん、前情報がなくても大丈夫だ。能力を使えば鍵も無力化できよう。だが、一応。一応の確認だ。

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