~手紙より集まりし者達~Worship of nothingness (連続リレー小説)

50さあ、開幕の号令を◆X5668N6XH6
2016-11-23 19:56:38
ID:2EfCyrmg

(>>47より)

『これは失礼、不束なことを聞いてしまった。成る程、“暗きに注意せよ”ですか……フフ、私の得意分野というやつですな。』
「魔法は他のヤツらのが上手く対処できんだろ。俺たちゃ魔法耐性ってもんが希薄なようでね。さっ、そろそろ頃合いだな?」

 底知れぬ笑い声の漏れるペストマスクとボロ布が並び立つ珍妙な光景。だが、それも長くは続かない。何故なら__

「さあて、ちょいとスケールダウンはしたかも知れねぇが……討伐隊様の復活だい!叫ぶしか能がねェ雑魚なんざ、適当に薙ぎ払っちまえや!」

 フェンスの解放とほぼ同時に、風が瘴気を運び出す。かつての魔王が残す負の遺産の一端を感じながらも___討伐隊の面々には、とうにそれぞれの“覚悟”が宿っていた。魔物共の怒号を合図とし、彼らは弾けるがごとく疾駆する__!

 魔弾の嵐と剣の舞踏が魔物の群れを蹂躙する中、戦場のど真ん中に老紳士が突如出現する。化物とて自然の理程度は心得ている、故に数瞬は困惑に足が止まってしまう。が、対する老紳士・ルミナの方は魔の物に臆する事もない。遊歩道を散歩でもするように魔物の一体へと近付き、コツン、と手持ちの杖で軽く小突いた。
 当然のことながら、魔物とて黙ってはいられない。明確な怒りの表情を湛えた者共は、猛り狂いつつ鋭利な爪でもってルミナの肉を張り盛んと豪腕を振り抜く___

 
 飛び散る鮮血。響き渡る断末魔の叫び声。爪は確かに肉を捉え、一直線に切り裂いてみせた。


 ただ一つ、一つだけ魔物の群れに誤算があるとすれば。それは、切り裂く対象が“同胞”に切り替わってしまったことだろう__
『元戦闘員でもない私に触れられる時点で、未熟にも程がある。輪廻の輪にでも入ってよく考えなさい、己の敗北の理由。尤も幾らやり直したところで、勝ち目は万に一つもないですが。』

 たった今仲間を殺めた魔物の背後に、現われ出でるは黒づくめの“死神”の影。気配に気付き振り返った彼の双眸には、二本のダガーが丁重にプレゼントされた。
 同胞の死を嘆く間すら冗長。飛び掛かる犬型の魔物。だが、死神が指を鳴らせばあら不思議、全方位をダガーに囲まれた可哀想な犬公の出来上がり。

『魔物とて、命は尊いものだろう? ならばいっそ、己で土に還ったらどうだ。私に挑み、心半ばに散るよりは有意義な死だろうに。』

 死神の言葉は、魔物の群れに沁み渡る程の効力は持たないようだ。あれよあれよと死神の奇術に嵌り、死屍の積み上がる様のなんと儚きことか……。

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