魔物達は実に多種多様であった。
肉くらい簡単に引き裂く鉤爪を持った者。
中に浮かんだ目玉。
死霊の兵士、大型の狼、クジラ以上の巨体を誇る巨人。
どれもこれも恐ろしい、「魔物」の名に恥じぬ力を持っていた。
しかし百戦錬磨の討伐隊には歯が立たない。
切り刻まれ、凍結させられ、貫かれ、夥しい群れは蹂躙されていく。
私はどうしていたか?
もちろん私は討伐隊を追ってきた者。
魔王からJを救った事だってある。
今更恐れてなんていられない。
能力をフルに使い魔物共を千切っては投げ千切っては投げ、死体の山を築いてみせた。
・・・といいたい所だが現実は非情だ。
さて本当の私の華やかしい功績を挙げてみよう。
まずこっそりJの懐に潜り込んだ。
私の入った写真をポプラに運ばせたのだ。
あの場の誰にも見られずにだ。(もっとも委員長やらやあのクソカス共は私の存在に気付いているがね)
この時点で我ながら大したヤツだと思うよ・・・。誰か勲章をくれ。
二つ目、相棒に撮影をさせた。もちろん私は外へは出ない。
おかげで良い写真が何十枚も撮れた。
最近、ちゃんと定職を取ろうと考えている。
この特ダネを出版社に売りつけて記者としてデビューしてやろう。
この能力があれば編集長にのし上がる事くらい容易い。
そして私を村から追い出しあろうことか下着泥棒のレッテルを貼りやがった村のバカ共を見返してやる。
盗撮していただけじゃあないぞ。
ちゃんと勇敢に戦った。
雷や炎を取り出して怯ませた。
先程も魔物の目玉を見事焼いてやった。
この素晴らしい活躍によりJに攻撃のチャンスを与えたのだ。
さぁ勲章を出せ。
・・・あまり、目立ちすぎるのはマズイ。
近くにいるのがJだけだからまだいい、しかし魔法使いやら能力者に相棒が見つかればどうなるか。
魔物と勘違いされヤツらと同じ末路を辿るハメになるだろう。
唐突に戦闘は幕を下ろした。
幻覚でも見ていたかのように夥しい程の魔物が跡形もなく消え失せたのだ。
あのクソカス共がなにかしたのか?それとも妙なマスクの男がどこかへ瞬間移動させたのか?
そのどちらでもなかった。
魔物の代わりに男達が現れる。機関だった。
全員黒づくめ、恐らくそれが彼らのユニフォームなのだろう。
これから第二ラウンドが、ついに機関との戦いが始まる・・・と思いきや連中は二言話しただけで消えていった。
私はシンパシーを感じるな、などと呑気な事を考えながら撮影を続けていた。