~手紙より集まりし者達~Worship of nothingness (連続リレー小説)

69尽きない疑問符◆X5668N6XH6
2016-12-09 00:23:00
ID:.keR50pU

ある者は大剣を振るい、ある者は魔法を駆使し、ある者は荒技を用い__そうそう、丁度ハーシーのように骨を砕かせて脳幹を貫くような戦法で、次から次へと魔物の軍団を葬り去る。とうに百匹前後は倒したろうが……魔の群れは寧ろ、より密度を増してきている気がする。無論敗北は無い、だが勝利も見えない。魔物達が根負けしてくれるまで戦い続けるか、さもなくば__微量の恐怖と久々の高揚感が頭を突き抜ける。さて、次は誰を屠る? まずは真正面のボンクラから引き裂いてやろうか。ハーシーは爪の硬化を解くのすら忘れ、赤褐色がこびり付いた刃を真っ直ぐに振り下ろす。風圧に削がれた血糊が飛散し、銀の刃は吸い込まれるように魔物の脳天へ向かっていき……

パチン

「おわぁっっとっ! っとっと……」
ガスリと、地面を削る鈍重な音。ボロ布は見事に醜態を晒すこととなった。刃を引き抜こうと再び力を込めつつ辺りを見回す。醜態とまではいかないまでも、皆それぞれが困惑と喫驚の表情を浮かべていた。一体、この一瞬に何が起きた?

解答は存外早く示された。引き抜いた刃に映り込む、見えてはいけない筈の者達。巫山戯た言葉の組み合わせ方は、声の持ち主の正体を高らかに宣言していた。ならば話が早い、此処で仕留めてしまえばこっちのもの。ハーシーは単純明快な名采配を見せつけんと一歩前に歩み出る。

「アンタら…確か魔王の復活を目的としてるんだってな。なら、ここで倒すだけだ!」

言い終わるよりもずっと疾く、【死神】が動いた。刹那の隙を突いて男達の前に瞬間移動、心臓部を貫かんと仕込み杖が唸る。だが、時既に遅し。剣は空虚を切り裂くに留まった。

『……取り逃がしました、ね。惜しいことをしてしまった。』

何処と無く悔しさの滲む声がマスクにくぐもる。ルミナは片手で数回杖を振り回すと、パッ、と手を離しながら元の直立姿勢に戻った。杖はいつの間にやら老紳士を残して何処かへと消えてしまったようだ。
彼は背後の仲間達へと向き直り、言葉を紡ぎ出す。

『でも、これで幾つか分かったこともありますね。まず一つ、組織は確かに存在している“”ということ。そしてもう一つ、“魔物は野生動物ではない”ということでしょうか。』

(分けます)

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