「なんだろ、母さん宛かな......えっ」
「瑠璃、どしたーーあれ、それって」
〔元魔王討伐隊へ〕
封筒には黒字でそう書かれていた。メンバーの誰かから手紙が来たのだろうか、なんて少し期待して封を開け、中から手紙を出した。そして、私の期待は外れていたことを知る。
「魔王、カルト集団、夏の国、明日13時......緋翠!」
ぶつぶつと呟く私を黙って見てくれている緋翠に手紙を押し付け、私は家の中に駆け込んだ。
「ちょっ、瑠璃!?」
「召集かかった。 準備してくる!」
自室に駆け込み、トレーニング用ジャージから着替えて、机の引き出しを開けた。そこには、1年前の魔王戦で使った短剣が入っている。
「......また、よろしく」
なんて呟きながら、腰の辺りにそっと入れる。そして、魔法用の杖を掴んで、部屋を出た。そして、台所の母さんに声をかける。
「母さん母さん! 私、もう一回旅に出ることになった!」
「あら、行ってらっしゃい。 前の旅の後、あなたすごくいい顔で帰ってきたのよ。 だから今回も、そうなるといいわね」
「! ありがとう、母さん。 行ってきます」
何も聞かず、笑顔で送り出してくれる母さんに感謝して、外に出る。
「私に手紙見せてよかったの?」
「あ、考えてなかった」
言われてみれば確かにそうだ。大丈夫だっただろうか。
「......まぁ、誰にも言わないけどさ。 はい、手紙と、それからこれ持ってって」
緋翠が、小さなお守りのようなものを渡してくれる。
「これは?」
「本当に困ったら開けてみて。 それまで開けちゃ駄目だからね」
分かった、と応えてポケットにしまう。
「じゃあ、行ってくるね。 夏の国遠いから間に合わないと困るし」
「あ、送ってあげるよ」
さらりとそう言った緋翠は、自分の杖を私に向けた。
「移動(ムーブメント)・夏の国!」
緑色の光に包まれて、緋翠が徐々に見えなくなる。
「行ってらっしゃい」
「ありがとう、行ってきます!」