~手紙より集まりし者達~Worship of nothingness (連続リレー小説)

7瑠璃
2016-11-19 23:50:17
ID:cwhX6hiE

「なんだろ、母さん宛かな......えっ」
 「瑠璃、どしたーーあれ、それって」

 〔元魔王討伐隊へ〕 

 封筒には黒字でそう書かれていた。メンバーの誰かから手紙が来たのだろうか、なんて少し期待して封を開け、中から手紙を出した。そして、私の期待は外れていたことを知る。


 「魔王、カルト集団、夏の国、明日13時......緋翠!」

 ぶつぶつと呟く私を黙って見てくれている緋翠に手紙を押し付け、私は家の中に駆け込んだ。

 「ちょっ、瑠璃!?」
 「召集かかった。 準備してくる!」

 自室に駆け込み、トレーニング用ジャージから着替えて、机の引き出しを開けた。そこには、1年前の魔王戦で使った短剣が入っている。

 「......また、よろしく」

 なんて呟きながら、腰の辺りにそっと入れる。そして、魔法用の杖を掴んで、部屋を出た。そして、台所の母さんに声をかける。

 「母さん母さん! 私、もう一回旅に出ることになった!」

 「あら、行ってらっしゃい。 前の旅の後、あなたすごくいい顔で帰ってきたのよ。 だから今回も、そうなるといいわね」

 「! ありがとう、母さん。 行ってきます」

 何も聞かず、笑顔で送り出してくれる母さんに感謝して、外に出る。

 「私に手紙見せてよかったの?」
 「あ、考えてなかった」

 言われてみれば確かにそうだ。大丈夫だっただろうか。

 「......まぁ、誰にも言わないけどさ。 はい、手紙と、それからこれ持ってって」

 緋翠が、小さなお守りのようなものを渡してくれる。

 「これは?」
 「本当に困ったら開けてみて。 それまで開けちゃ駄目だからね」
 
 分かった、と応えてポケットにしまう。

 「じゃあ、行ってくるね。 夏の国遠いから間に合わないと困るし」

 「あ、送ってあげるよ」

 さらりとそう言った緋翠は、自分の杖を私に向けた。

 「移動(ムーブメント)・夏の国!」

 緑色の光に包まれて、緋翠が徐々に見えなくなる。

 「行ってらっしゃい」

 「ありがとう、行ってきます!」

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