~手紙より集まりし者達~Worship of nothingness (連続リレー小説)

70尽きない疑問符◆X5668N6XH6
2016-12-10 21:06:59
ID:kl40pwW.

「“組織は最低限の実力を有している”、ってのも重要だろうよ。まあ、分かったことと同じくらいに謎も増えたけど。」

 すかさずハーシーも口を挟む。手に持っている刃は、ほんの少し先端部が欠けていた。刃を持ち上げ、欠け口の形状を確認。他には目立った損傷もない、戦闘の続行は可能か……。

と、ハーシーが苦笑を漏らした。刃を下ろしたら、“偶然にも”ジェーナと目が合ってしまったから。対するJは相変わらずのポーカーフェイスを貫く。だが__二人はどうやら、互いの視線に共通項を見出したようだった。ブルンと片手で得物を振るい、視線をとある方向へと向ける。徐に、ハーシーの口が開いた。

「例えば……“機関の奴らがどうやって俺達の居場所探り当てたのか”、とかよォ〜。案外“草”ってのがいるのかも知れないな。ほら、不思議には思わねーか。ええ?」

視線の先にある者、それは他ならぬファレル・カーライル。フェンスの意味を問うた時とはまるで違う、鋭い双眸が彼を射抜く。

「いや、あんたのこと疑ってるわけじゃあねぇんだ。ただちょいと違和感があってな……。その矢文、“本当に元討伐隊から送られた”のか? 何か裏付けがあるんなら別だ、けど名前さえ知ってりゃ誰でも騙ることは出来るわけで__」
〈ようやく気付いたところ申し訳ないが、此処では止めておけ。或いは機関の奴らに聞かれている可能性がある。〉

Jの一言がハーシーの追求を遮る。なるほど確かに機関の者達は瞬間移動というより、“最初から全体を俯瞰していた”かのような態度を取っていた。可能性は大いにある。ハーシーは“だな”と軽く頷いて一歩引き下がって見せた。

〈しかし、手頃に訊問……否、情報の整理が出来る場があればいいんだが。〉
『そういうことでしたら』

空を見上げ、呟くJ。そこに人差し指を立てながらルミナが歩み寄ってきた。

『丁度御要望に沿った場所をいくつか知っていますよ。そうですね……“悪魔の森”なら、組織の者も追ってくるのは難しいのでは? 我々の動向も探られにくいでしょう。』

彼の提案は、なんと“悪魔の森”の内部に向かうというもの。当然森に入れば別の危険が付き纏うことになる、あまり賢い選択とは言えないだろう。皆、あまり良い表情では無い……ただ一人、何かに納得したようなハーシーだけを除いて。

「ああ、“悪魔の森の素敵な場所”ね……。その言い方じゃ、初見さんには通じねぇと思うぜー。あ、みんな安心してくれや。全員纏めてコイツが連れてってくれる。魔物とは縁遠い場所にな。」

ハーシーは、敢えてぼかした言葉遣いで場の全員に語り掛ける。魔物とは縁遠い……“悪魔の森”の状況とは合致しない内容の勧告。つまり、それが意味することは__

『ファレルさん、此処に居続けるのは貴方にとっても宜しくないでしょう。取り敢えず、穏やかに語らえる場所に移動しませんか?』

“勿論、移動するかどうかは皆さんに委ねますが”、ルミナは付け加えて告げる。虚無から再び杖を取り出した彼は、片手で静かに自身の前へと持ち上げた。杖の先端が陽光を受けて輝きを放つ。

『同意される際には、この杖に触れてください。この杖が場への鍵となります故に。』

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