一番ファレルが心配していたのは…ルミナのマスクの奥でどんな表情をしているか…だ。
『では発ちましょうか。初めての方は目が眩む可能性がありますので、目を閉じることを推奨させていただきます。それでは、3・2・1……』
私はカウントが刻まれてる間にサングラスをかけた。その刹那、私たちは眩い白光に抱擁された。
見よ、前方の景色を!
辺りは『悪魔』の森という異名に相応しくない神秘的な空気感に包まれている。
ハーシーがそれを語ってくれたようだ。
「よっ__とッ! っとっと……。 アイツ、独りで行きやがったな……! あー悪い、アンタら。ルミナは“先に”行っちまったみたいでよ。」
「多分ルミナは彼処の中。」
「アイツあんな風して酒場の経営しててさ、それがあの小洒落た建物。ついてきな。あ、もう分かったろうけどここは悪魔の森とは無関係。」
そう…悪魔の森とは対極なのだ。
ハーシーは持ち前の陽気さを見せるように口笛を吹きながらOPENの看板を提げた酒場 ─morning starへと足を運ぶ。
涼やかな鈴の音色と共に老紳士は現れる。
『フフ、先程は失礼しました。片付けを済ませていなかったことを思い出しまして……』
そう…彼は酒場の主ルミナ=ウィリアムズ。
そう答えたルミナにハーシーは憤りを隠しきれないようだ。
「馬鹿、んなのどうでも良いことだろ。ったく、人に案内放り投げやがって。てか普通は出る前に片付けるよな?」
動じないルミナ。
それを華麗にスルーしながらの挨拶。
まったくブレがない。
『では改めて……私は、ルミナ=ウィリアムズです。一応名乗らせて頂きますね。人によっては、私を見るのが初めてということもあるでしょうから。』