前を歩くカップルが紙袋を持ったオタクたちを嘲笑しています。何も生み出さず、味わうことも知らぬ男女が、ただ垂れ流される情報を自分なりに選択し、それがみんなとそうズレてもいないというただそれだけの理由でオタクたちを嘲笑しています。その清潔なツルツルの表皮を剥げば、ただ肛門のような唇から便所のタイルのような歯が普段よりよけいに見えているにすぎないというのに。
これはあくまで私見ですが、他者から承認されることに快を感じるのがオタク文化を食い物にしている「サブカル」だとすると、「オタク」は他者を承認することに快を見出す種族なのではないでしょうか。実際には両者は混合し、時には垂直に統一されることがあるのだとしても、そういう傾向性はあるような気がします。でもそれはあくまで「男の世界」の話です。
私は「サブカル」やそれを薄めたようなオサレな連中は死ねばいいと思います。けれど私の中にある強い力は、他者から承認されたいという強い願いです。そして、その上で美しい女の子たちが互いに承認し合う美しいコミュニティ。その強い相互作用は、実際には男たちの弱い承認の力を、その数を必要とするのですが、男たちの醜い力は私たちの相互承認の力をますます輝かせるばかりなのです。
「あ、ブーだよ」
香織さんの声と共に訪れたシンクロニシティ。でもテレビに映った高木ブーは私が知ってる高木ブーとはまるで別人でした。なんというか、肌が。肌から伝わってくるものが。テレビですらこうなんだから、実際、本物に会ったらもっと別人なんじゃないか?じゃあ、テリー伊藤も?
「高木ブーのハワイアン・ネーム知ってる?」
香織さんがうれしそうに聞いてきました。
「ハワイアン・ネーム?」
「ホアコクアって言うんだって。『友達の支えになる』っていう意味らしいよ」
私は泣きそうでした。 (完)