一方、六次元亜空探題では、北条秀一が琵琶を弾いていた。
形而上学探偵・よしおは、かしこまりながらその音色に耳を傾けていた。
「祇園精舎の鐘の声~諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色~盛者必衰の理をあらはす
おごれる人も久しからず~ただ春の夜の夢のごとし
たけき者も遂にはほろびぬ~ひとへに風の前の塵に同じ」
(すべては最初から無いほうがよかったのではないか…
あらゆるものは存在しなかった方がよかったのではないか)
よしおは、改めてそのような感慨を味わっていた。
そうしたよしおの思考を見透かしたかのように、秀一は口を開いた。