「よしおさん、何か悩みがあるようですね」
よしおは驚いたように顔をあげ、秀一を見つめた。
(少年、いや少女の声…これが秀一の真魂、「麗奈」の声か)
「ああ、いや、大したことじゃないよ。ただ、この世界の存在自体が根本的に間違っているような気がしてならないんだ」
麗奈は微笑んで言った。
「それは、人間が持つ根源的な不満の表れだと思います。しかし、私はこの世界が間違っているとは思いません。この世界には多くの美しさや善良な人々が存在しています」
よしおは苦笑いしながら、麗奈に同意した。
「そうだね、君の言う通りだ。僕はただ、時折こんな考えが頭をよぎってしまうんだ」
「それは自然なことです。でも、時には自分自身を受け入れて、この世界の美しさを見つけることも必要です」
麗奈の言葉によしおは深くうなずいた。
「そうだね、ありがとう麗奈。君の言葉に励まされたよ」
「どういたしまして。私も常に自分自身と向き合っていますから、分かるつもりです」
二人は微笑み合い、琵琶の音色が響き渡る中で、お互いの存在を侵食していった。