「ありがとう。みんなのおかげで、私の長い人生は素晴らしいものになりました。」
そう言うと、政子の魂は天に昇り、次の輪廻転生の時を待つために、新たな世界への扉を開きました。
鎌倉武士たちが、異世界で魔物を倒している頃、政子は、全く別の世界で再び目を覚まそうとしていた。
「……ここは?」
目を覚ますと、そこは見知らぬ場所だった。どうやら自分はベッドの上にいるようだ。
「お目覚めですか?」
そこには、一人の大柄な男がいた。どうやら看病してくれていたらしい。
思い出した。自分はホテルでよしおという店の客に暴力をふるわれ、意識を失ったのだ。
「あなたが僕を助けてくれたんですか?」
「はい。」
「なぜ、僕を助けたの?」
「困っている人を助けるのは当然のことです。」
「……優しいんだね。」
「いえ、そんなことはありません。」
「あなたの名前は?」
「ベンケイ…」
男は急に機械のような話し方になり、目を赤く光らせた。
「キャアアッ!!」
皮膚が裂け、緑色のメタリックボディが現れた。
その姿はロボットそのものだったが、背中に巨大な剣を背負っていた。
「あなたは、アンドロイド!?」
「そうだ。俺は人間ではない。」
「まさか、あなたは僕を殺しに来たの!?」
「違う。俺の任務はあなたを守ることだ。」
「守る? どういうこと!?」
「そのままの意味だ。」
「待って! まだ聞きたいことがある!」
「なんだ。」
「僕は何者なの?北条政子なの?」
「あなたはかつて北条政子だった。しかし源義経でもあった。」
「どういうこと?二人は生きている時代が重なっているでしょう?そんなことあるの?」
「あなたは、かつて異世界へ行った。そこで二つの人格を得たのだ。」
「異世界?それは何の話なの?」
「異世界というのは、我々の住む現実世界とは異なるもう一つの世界のことだ。」
「パラレルワールドみたいなものかな……」
「そうだ。そっちの世界では、あなたは『隆子』という名前で暮らしていた。その世界で、あなたの夫であるヨシオは、『隆子』を虐待した。それが元で、あなたは離婚し、別の男性と結婚した。その男性は、暴力こそ振るわなかったが、酒癖が悪く、ギャンブルに溺れ、仕事もせず、生活保護を受けながら、パチンコをして過ごしていた。そのせいで、家計は常に火の車であった。それでも、あなたはその男を愛していた。なぜなら、その男は、転生してきたかつてのあなた自身だからだ。」
「自分が自分と結婚したの!?」
「そうだ。あなたは、毎日苦しい生活に耐えていたが、ある時、酔っぱらい運転の車が突っ込んできて、子供を守るために、子供を庇って轢かれてしまった。そして、あなたは死んでしまった。」
「夫の方の僕は?」
「あとを追って自殺した。」
「それで、二つの魂が、それぞれ過去の同じ時代に飛び、一方は北条政子に、一方は源義経になったっていうの?」
「その通りだ。」
ベンケイはまっすぐに隆子(北条政子の魂と源義経の魂が合体したもの)を見つめながら、力強く肯定した。
「ギャァーーーーハハハハハ!!!!!!!」
隆子は突然、狂ったように笑い出し、「ブンッ」とつぶやいて気絶した。