「心配するな。こいつらはまた生き返る」
「え?」
「すでに死んでるのに生き返るというのはおかしな話だな。正確にいうと、部分的に時間をループさせて、戦いの前の状態に戻すんだ。これがその装置。幕府からの支給品だ」
そういってありぃは何らかの装置を吹雪に見せた。
「そもそも時間のループはいたるところで起こっている自然現象だ。個々の宇宙、個々の異世界もループしているし、それらの内部でも無数の部分ループが大小長短さまざまに生じている。そして、それらを合わせた『全体』もまたループしている」
「そうなんですか」
「世界も物体も物体の『在り方』としての精神や魂、文化や社会といったものも、すべては無数の力の組み合わせでできていて、それがしばらく均衡している
状態が石や岩や人間の身体や、その中である『在り方』をとる心というものなんだ。それらは無数の力の組み合わせでできているが、決して『無限』ではない。だから、いつかは組み合わせが尽きる時がくるんだ。すると、また同じことが繰り返して起こる。これが全体に起こるループで俗に『永劫回帰』などと呼ばれている」
「はあ」
「しかし、そこまで極端に考えなくても、実は『同じ組み合わせ』や『同じ組み合わせ同士の組み合わせ』による部分的な繰り返しは、もっと頻繁に起きているんだ。これが自然現象としての『部分ループ』だが、我々は一般的にはこれのことを『時間ループ』と呼んでいる」
「はい」
「この自然現象としての『時間ループ』を何千年もかけて研究した連中がいる。私も『幕府』と呼ばれているということ以上は何も知らないし、どういう原理なのかも知らないが、とにかく、幕府が支給してくれたこの装置で『人為的な時間ループ』を引き起こすことができる。それで何千回、何万回も死んだ罪人、バラバラの肉片になった罪人を元の状態に戻して繰り返し戦わせることができる」
「へえ~」
吹雪が全く理解していないことは明らかだったが、言うだけのことは言ったとばかり、ありぃは二つの死体をそのままにして一人でスタスタと歩きだした。吹雪もチョコチョコと歩きはじめた。