今度は寺の境内みたいなところで、女同士が戦っていた。
「あれは上野千鶴子と瀬戸内寂聴だ」
「へえ~‥‥誰?」
「いや‥知らんならいい」
獄卒は観光ガイドじゃないんだぞ、と言いたいのをありぃはぐっと我慢した。
上野千鶴子と瀬戸内寂聴は、お互い素手で向き合い、それぞれ構えをとっていた。
「あれ?どっかで見たような構えだな」
吹雪がつぶやいた。すると、
「イヤ~~ッ!天翔十字鳳!!」
瀬戸内寂聴が両手を横に広げた十字の構えから跳躍し、上野千鶴子に襲いかかった。
「ブン!」それを迎え撃つはずの上野の拳は空をきり、両肩からは血しぶきがあがる。
「ぐあっ!」
「フハハハ!私は天空に舞う羽根!どんな達人にも砕くことはできぬ」
寂聴は吊り上った狂人の目で爆笑した。
「いや『北斗の拳』のパクリじゃん!」吹雪はすかさずツッコんだ。
となると、上野は「天破活殺」で対抗するのかと思いきや、
「鷹爪乱舞掌!!」と叫んで寂聴に突進した。
「PS3『真・北斗無双』に登場したアミバの技かよ!」吹雪はツッコまざるをえない。
ありぃはホッとした。「鷹爪乱舞掌」とは、腕を無茶苦茶に振り回しながら突進し、相手を引っ掻きまくるという、いかにも『女子』という技だが、そのようなことを言うとフェミニストである上野に何をされるかわかったものではないため、吹雪による別角度からのツッコミに安堵したのである。
「まあ、こいつらは延々戦わせておこう」
ありぃはそう言って、スタスタと歩き出した。吹雪もチョコチョコとついていった。