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昼飯を食べ終わり、彼女は俺の棚にずらりと並んだ本を読みたいと言って、こうして夕方まで読み更けている。
本棚に詰め込んでいた本の殆どは地理や生物学、図鑑などの若い娘にはつまらない物ばかりだが、彼女は目を光らせて楽しそうに読んでいた。
そうか、生まれてずっと病院で隔離されていたという事は学校に通えなかったんだな。恐らく一般的な学習は受けているかもしれないが、こうして本を読んだりするのはあまり経験が無いのかもしれない。
俺もはっきりいって13歳から学校は通えてないも当然だ。だから彼女の気持ちは少しながらも理解出来る。
「本、好きなのか。」
俺はソファーに座って、黙々とページをめくる彼女へ聞いてみた。
「本、好きです。病院じゃ絵本しか無かったから、楽しい。」
「そうか。」
「でも。」
彼女は表情を曇らせた。
「難しい言葉が、多いですね。」
難しい言葉。そうか、やはりそこに息詰まるんだな…。
こればかりはどうしようもない。後でよく読んでいる本に振り仮名でも書いておこう。
「何度も読めば、大体解るようになる。」
「分かりました。」
彼女はそう返して、再び本を読み始めた。
今、彼女が読んでいるのは世界各地に生息している生物の本。一番興味津々に読んでいる。
俺はそんな彼女を横目に、兵器や戦争に関しての本を奥の方へ静かに隠した。
そう悠々と昼を過ごし、昼の残りで夕食を食べた俺とスリア。
見ていて可哀想に感じるぎこちないスプーンの持ち方に目を逸らす食事というのは、心が痛む。
しかし、今日一日はこうやって俺が彼女の面倒を見てやれるが、明日からはそうはいかない。
どうするべきだ、また病院に預けるのか?そんな事したら今度こそ彼女は心を閉ざしてしまいそうだ。
だが国家から呼ばれたのだから、どんな理由があろうとも出向かないとならない。特に俺みたいな前に傭兵をやっている様な雑兵はな。
俺は眠たいといった彼女を俺のベッドに寝かせ、そして窓から覗いてくる月を眺めている。
今日は寝なくて良い。というよりかは、明日の事で頭が一杯で寝れない。