>>33
彼がだらだらと話をしている間、俺は迷いなく銃口を向け続けた。あやふやな所が何ヵ所かある。かといって抜け目を突くような事柄でもない。そもそもこの男一人で俺達に伝えに来たという時点で根本的におかしいのだ。
「魔物の掃除程度、軍を出せば良いだろう。しかし、報酬を出すというのならばやってやろう。」
俺はその男へある契約を突き付けた。
「報酬、とは。」
黒いコートの彼は真剣な顔で返答する。それを気にせず俺は口を開く。
「その言葉通りの意味だ。お前が俺に依頼する代わりに、相応の報酬を支払って貰おう。それが出来ないのならば俺は帰る。」
「もし駄目と言ったら。」
「さっき言った通りだ。」
「仲間を置いて自分だけ悠々と帰ると?」
「それがなんだ。」
素早いやり取り。俺が言い返した後に横から槍が飛んでくる。
「なんだその態度は、英雄気取りか。」
俺の隣に歩いてきた男、さっきのボロ布の男だ。短いブロンドの髪を揺らしながら腕を組んで俺を睨んだ。
「…早く答えろ、会長とやらいう奴。」
ファレルは眉を潜める。やがて一時の沈黙の後、先に口を開いたのは彼だ。
「良いでしょう、相応の報酬は充分に支払います。確実に。」
その丁寧な口調を崩さず、ゆっくりと答える。
「しかし、私がこう発言したからには貴方も相応の仕事をこなして貰わないと困ります。さもなくば、貴方に報酬を支払う義務など御座いません。」
「貴方?何を言っている。」
俺は彼の言葉に、当たり前のように返答する。
「報酬は貴方達に、だろう?」
一瞬だが彼の顔が歪んだ。だが、すぐに元の表情へ戻る。隣に立ったボロ布の間髪の男も微笑してファレルを見詰めている。
後ろにいたペストマスクの男は相変わらず、瑠璃は真顔である。
「決まりですね。」
ペストマスクの男は割り込むようにそう言った。隣の瑠璃も、大きく頷く。
それを確認した自分はゆっくりと銃口を下げて、護身用の小型フリントロックピストルを腰に戻した。
「さてさて、話もついた所で…。」
ボロ布の男は腕を組んだまま歩き出す。
「先頭は誰にするよ?」
首を回して俺達にそう言った。