~手紙より集まりし者達~Worship of nothingness (連続リレー小説)

35“夏”の足音 -Lumina phase-
2016-11-20 00:33:51
ID:H5IbE/xs

(>>26から、ルミナ視点)
 大剣使い__確か“J”と名乗っていたか__に向けた挨拶は、背後の魔法使いにも届いていたようだ。まだ年若いだろう彼女は健気に自らの名を名乗ってくれた。いや、名乗られる以前から名は知っていた。このまま背を向け続けるのも瑠璃に対して失礼だ。改めて振り返り、帽子を取って深い一礼。

「無理をなさらなくても結構ですよ、瑠璃さん。貴女とは殆ど初対面だ、覚えていなくても当然のことです。では、改めて……よろしくお願いしますね。」

 口振りから判る。彼女は自分のことを覚えていないだろう。でもそれは大きな問題じゃない。またこうして集えた事実こそが喜ばしいのだから。__今連れて来た“恩人”が聞いてなかったのは幸いだったか。

 フェンスで視界は悪いが、どうやら封筒を送りつけてきたであろう依頼主は到着していないようだ。では暫しの間談笑を楽しもうか__口を開きかけた瞬間、すぐ側でハーシーの目線が動いた。目線の先を辿れば、誰だろうか、黒コートの男が佇んでいた。ファレル・カーライルと名乗る彼、夏の国の復興を一任された存在だという。
 さて、コイツは“裏切り者”の常套句な訳だが……先にハーシーが動いた。先程から呟いてきた言葉そのままの直球な質問。彼だからこそ出来る至極単純な問いに、“裏切り者候補”は丁寧に答えてくれた。

「ふむ、そんなことがあったのですか。魔物……厄介そうですね。いいでしょう、その依頼は受けたほうが良さそうだ。魔物を放置した所で、益があるわけでもないのでしょう?」

 案外ハーシーの目の付け所は良かったらしい。見ないことには何とも言いようが無いが、電気のフェンスがその脅威を物語ってくれる。それだけならまだいい。問題は次の言葉だった。
 矢文。これはまた判断に苦しむ内容だ。討伐隊の動きに“機関”が気付いた……当たり障りのない、それでいて相当重要であろう内容。反応に苦しむ中、突然Jが空気を劈き疾駆した。

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