~手紙より集まりし者達~Worship of nothingness (連続リレー小説)

4O,T
2016-11-19 23:47:11
ID:cwhX6hiE

>>3

私の名は『O,T』
年齢22歳
自宅はなく、結婚はしていない
これといった定職はない。
人気俳優のスキャンダルだとか、強盗殺人やギャング同士の殺し合い現場の写真を新聞社に売って生きている。
「能力」のおかげで侵入も盗撮もし放題だ。最高のスクープを撮れる。
我ながら天職だと自負しているよ。
タバコは吸わない、酒はたしなむ程度。

日課は「人間観察」だ。
これがなかなか楽しい。1年は続けている。
ここで気を付けなくてはいけないのは「バレないこと」だ。
観察のために不法侵入を幾度となく繰り返しているからな⋯
もし見つかると最悪警察に突き出されてしまう。
相手が相手なので斬り伏せられるかもしれない。
だがこの「スリル」がいいんだ。
普通に生きていたらこんな素晴らしい気分にはなれなかっただろう。

『戻ってこい』
と、相棒に司令を出す。
もう10年以上もの関係だ。
「相棒」はすぐに現れた。
私の真下、床を幽霊のようにすり抜けて顔を出す。
その顔はシャレコウベだった。
鉄球を削ってドクロにしたようなルックスの彼は、無機質な単眼と表情で私を見上げる。
次にすり抜けて現われたのはカメラの三脚、彼の下半身だ。
その見た目は三脚というよりも昆虫の脚に近い。
節足の生えた一つ目のドクロ、かなり不吉だが慣れた今では恋しささえ感じられる。

彼の後頭部に空いた横長の細い穴から10枚の写真が飛び出す。
そして彼は私が頼むより前に、単眼から発せられる眩い光で照らしてくれた。
私の今いる場所はとても暗く、写真どころか自分の手さえ見えなかったので助かった。
順番に写真をチェックしていく。
紙切れを眺める1人の男、バイクに跨り走る男、病院の待合室に
で死体のように白い女と話す男。
半分以上が同じ男の写真だった。
彼は人気俳優だとか、近いうちに敵組織と銃撃戦おっぱじめるギャングだとか、そういう人物ではない。
この写真を新聞社へ持ち込んだところで一銭にもならないだろう。
いや、ちょうど「元傭兵に24時間密着!」といった企画が上がっていれば小遣いにはなるかもしれない。

彼こそが「観察」の対象だ。
一年程前からずっと見ているが、まだバレてはいない。

残りの数枚、彼以外の写真に目を通す。
写っていたのは手紙だった。
内容を読んで驚愕する。
一年前の嫌な記憶が蘇ってくる。
「魔王を崇拝するカルト教団」か。
私はその連中についてなにも知らない、音楽の趣味さえも知らない。
だが正気ではないことはこの12文字で嫌という程理解できた。
「正気でない人物」なんて存在は漫画や小説でしかお目にかかったことはないが、私を恐怖させるには十分だった。

彼はその正気でない連中と戦うことになるのだろうか。
組織として動く分、魔王以上に厄介で手強い存在なのだろうか。
しかし、私は彼を一生観察してやると決めたのだ。
例え狂人の巣窟だろうと燃え盛る火山だろうと行ってやろう。

真下の部屋にいる彼をまた見よう。
今度は写真でも相棒を通してでもなく、床に空いた穴に顔を押し付け見ようとする。
死体みたいな女と話す彼が見えた。
彼女が誰なのか、どういった関係なのかは知らないしどうでもいい。
ただ、美しい女性だとは思った。彼女の写真も何枚か持っている。
2人は依然として、屋根裏の私には気付いていないようだった。

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