キリスト教において、消滅論（消滅主義、破壊主義とも）とは、最後の審判の後、すべての救われない人間、すべての堕天使（呪われた者）、サタン自身が完全に破壊されて存在しなくなる、あるいは地獄（しばしば火の池と同義）で永遠の苦しみを受けるのではなく、意識が消滅すると信じることである。消滅論は、火の池で永遠の拷問と苦痛を受けるという信仰と、誰もが救われるという信仰（普遍的和解または単に「普遍主義」）の両方と対照をなすものである。

消滅論は、キリスト教の条件論の教義、すなわち、人間の魂は永遠の命を与えられない限り不滅ではないとする考えと直接的に関連している。消滅論は、神は最終的に悪人を滅ぼし、正しい人だけを残して不滅に生きると主張する。したがって、罪を悔い改めない者は、罪が神の聖なる性質と本質的に相容れないため、永遠に滅ぼされる。セブンスデー・アドベンチストは、邪悪な者は火の池で滅びるので、永遠の地獄に住むことは異教徒の起源による誤った教義であると仮定している。エホバの証人は、死者は存在しなくなるため、死後に罰があるはずがないと信じている。初期のペンテコステ派の先駆者であるチャールズ・フォックス・パラムは消滅論を説いた。

消滅論はキリスト教の歴史を通じて登場し、何人かの教父によって擁護されてきたが、しばしば少数派であった。しかし、1980年代になると、ジョン・ストットをはじめとする著名な神学者たちが、聖書に最高の権威を与える者たちが、聖書本文の正当な解釈として、この信仰を誠実に保持することができると主張し、復活を遂げたのである。20世紀初頭には、ケンブリッジ大学のバジル・アトキンソンをはじめとする神学者たちが、この信仰を支持していた。20世紀のイギリスの神学者では、チャールズ・ゴア司教（1916年）、第98代カンタベリー大司教ウィリアム・テンプル（1924年）、カンタベリー大司教のチャプレン、オリバー・チェイス・クイック（1933年）、ウルリッヒ・エルンスト・シモン（1964年）、G・B・ケアード（1966年）などが消滅を支持する説を示している。

キリスト教の教派の中には、19世紀半ばのミラー派・アドベンチスト派の運動の影響を受けた消滅論者がいる。セブンスデー・アドベンチスト、バイブル・スチューデント、クリストデルフィアン、各種アドベント・キリスト教会などがこれにあたる。さらに、プロテスタントや英国国教会の作家の中にも、消滅論者の教義を提唱しているものがいる。英国国教会の教義委員会は1995年に、地獄は永遠の苦悩ではなく「完全な非存在」の状態であるかもしれないと報告しました。

消滅論者は、聖書の釈義、初期の教会文書、地獄の教義に対する歴史的批判、および神があまりにも愛に満ちていて被造物を永遠に苦しめることができないという概念に基づいて、この教義を提唱している。また、一般的な地獄の概念は、ユダヤ教の聖書間期の思索、ギリシャ哲学に端を発しキリスト教神学者に影響を与えた不滅の魂に対する信仰、さらにグラフィックで想像力に富んだ中世の芸術や詩からきていると主張している。