背景
早漏症は、セックス中に男性やパートナーが望むよりも早く射精してしまうという、男性によく見られる問題であり、不幸や人間関係の問題を引き起こすことがある。早漏症の治療には、抗うつ薬として最もよく使用されている選択的セロトニン再取り込み阻害薬（SSRI）が使用されている。

目的
成人男性における PE の治療における SSRI の効果を評価すること。

検索方法
複数のデータベース（Cochrane Library, MEDLINE, Embase, Scopus, CINAHL）、臨床試験登録、会議録、その他灰色文献の情報源を用いて、2020年5月1日まで包括的に検索を行った。出版言語やステータスの制限は適用しなかった。

選択基準
PE を有する男性に SSRI またはプラセボを投与した無作為化対照臨床試験（並行群試験およびクロスオーバー試験）のみを対象とした。また、「無治療」も適格な比較対象として検討したが、関連する研究は見つからなかった。

データ収集と分析
2名のレビュー著者が、対象研究のデータを独立に分類し、抄録を作成した。主要アウトカムは、治療による参加者が感じる変化、性交満足度、有害事象による試験中止とした。副次的アウトカムは、自己認識による射精のコントロール、PEに関する参加者の苦痛、有害事象、膣内射精潜時（IELT）である。統計解析は、ランダム効果モデルを用いて行った。GRADEに基づき、エビデンスの確実性を評価した。

主な結果
8254人の参加者がSSRIまたはプラセボのいずれかを投与する群に無作為に割り付けられた31件の研究を同定した。

主要アウトカム：SSRI治療は、プラセボと比較して、自己認識によるPE症状（「より良い」または「かなり良い」の評価と定義）をおそらく改善する（リスク比（RR）1.92、95％信頼区間（CI）1.66～2.23；中確実性の証拠あり）。プラセボで改善を報告した1000人当たりの220人に基づいて、これは、SSRIで症状が改善した1000人当たりの男性202人増（95％CI 145人増～270人増）に相当する。

SSRI治療は、プラセボと比較して性交の満足度をおそらく改善する（「良好」または「非常に良好」の評価と定義；RR 1.63、95％CI 1.42～1.87；中確実性の証拠）。プラセボで満足度の改善を報告した1000人当たりの278人に基づいて、これは、SSRIで性交に大きな満足感を得た男性1000人当たりの175人増（117人増～242人増）に相当する。

SSRI治療は、プラセボと比較して有害事象による治療中止を増加させることがある（RR 3.80、95％CI 2.61～5.51；低確証性の証拠）。プラセボの参加者1,000人あたりの試験中止数11件に基づき、これはSSRIの有害事象により治療を中止する男性が1,000人あたり30人増える（95％CI 17人増～49人増）ことに相当する。

副次的アウトカム：SSRI治療は、プラセボと比較して、参加者の自己認識による射精の制御（「良好」または「非常に良好」の評価と定義）を改善する可能性が高い（RR 2.29、95％CI 1.72～3.05；中確実性の証拠）。参加者1000人あたり132人が少なくとも良好なコントロールを認識していると仮定すると、これは、SSRIにより少なくとも良好なコントロールを報告した170人以上（95人以上～270人以上）に相当する。

SSRIは、おそらくPEに関する苦痛（「少し」または「全く」の評価と定義）を軽減する（RR 1.54、95％CI 1.26～1.88；中程度の確実性の証拠あり）。低レベルの苦痛を報告した参加者1000人あたり353人に基づき、これは、SSRIで低レベルの苦痛を報告した1000人あたり191人多い（92人多い～311人多い）ことに相当する。

SSRI治療は、プラセボと比較して有害事象をおそらく増加させる（RR 1.71、95％CI 1.48～1.99；中確実性の証拠）。プラセボを投与された男性1000人当たりの有害事象243件に基づくと、これはSSRIで有害事象を有する男性が173人多い（117人多い～241人多い）ことに相当する。

SSRI治療は、プラセボと比較してIELTを増加させる可能性がある（平均差（MD）3.09分長い、95％CI 1.94長い～4.25長い；低確実性エビデンス）。

著者らの結論
PEに対するSSRI治療は、プラセボと比較して、症状の改善、性交の満足度、射精のコントロール感など、患者に直接重要な多くのアウトカムを大幅に改善するようである。好ましくない影響は、有害事象による治療中止のわずかな増加と、有害事象発生率の大幅な増加である。アウトカムのエビデンスの確実性に影響を与える問題は、研究の限界と不正確性であった。