レーシング思考とは、躁病、軽躁病、混合病のエピソードでしばしば起こる急速な思考パターンのことである。競走思考は双極性障害や睡眠時無呼吸症候群の患者によくみられるが、不安障害、強迫性障害、注意欠陥多動性障害などの精神疾患でもよくみられる。レーシング思考は、睡眠不足、甲状腺機能亢進症、アンフェタミンの使用とも関連している。
解説
レーシング思考は、背景として経験されることもあれば、人の意識を支配することもある。思考、音楽、声が次から次へと頭の中を飛び交う。また、「音」に関連することなく、声や圧力のパターンが繰り返されることもある。これは非常に圧倒され、いらいらする感覚であり、時間を忘れてしまうこともある。場合によっては、コントロールが効かなくなり、恐怖を感じることもある。このような思考を夜寝るときに経験している場合、突然目が覚め、非常に不規則で突発的な思考の性質に驚き、混乱することがある。
レーシング思考は、個人の考え方によって現れ方が異なる。これらの現れ方は、気づかない、あるいは些細な注意散漫から、衰弱させるようなストレスまで様々であり、患者は思考を維持することができなくなる。
一般に、無意識のうちにランダムな考えや記憶が浮かんできて、それらが非常に速く切り替わるというエピソードを経験した人が、レーシング思考について説明する。ある考えが別の考えにつながるように、それらが関連していることもあれば、まったくランダムに思えることもある。レーシング思考に陥ると、自分の思考回路をコントロールできなくなり、1つの話題に集中できなくなったり、眠れなくなったりする。
関連疾患
レーシング思考の原因は不安障害に関連することが多いが、多くの影響がレーシング思考を引き起こす可能性がある。また、不安障害のほかにも多くの関連疾患があり、これらの疾患はレーシング思考を引き起こすことと二次的な関係があると分類することができる。レーシング思考と最もよく関連する疾患は、双極性障害、不安障害、注意欠陥多動性障害、睡眠不足、アンフェタミン依存症、甲状腺機能亢進症である。
不安障害
不安障害に関連するレーシング思考は、強迫性障害（OCD）、パニック障害、全般性不安障害、心的外傷後ストレス障害など、さまざまな疾患によって引き起こされる。
強迫性障害の場合、レーシング思考はストレス要因や誘因によって引き起こされることがあり、その結果、レーシング思考が生じる。これらの不穏な思考は、OCDを特徴づける強迫観念を引き起こし、ストレスを軽減させ、これらのストレスフルなレーシング思考をコントロールしようとする。
パニック障害は、恐怖や緊張のパニック発作が数分間繰り返し起こることを特徴とする不安障害である。このようなパニック発作の間、反応は状況に比例しない。レーシング思考は破滅的で激しく感じるかもしれないが、パニック発作の症状であり、パニックを鎮め、パニック発作を最小限に抑えるためにはコントロールしなければならない。
全般性不安障害は、神経学的な不安障害で、不合理な話題や問題に対して制御不能で過剰な心配を伴う。GADと診断されるには、これらのストレスの多い考えが少なくとも6ヵ月間存在しなければならない。他の症状とともによくみられるものにレーシング思考がある。GADでは、リラックスできない、考えや心配事を手放すことができない、結果に比例しない小さな心配事や強迫観念が持続する、さらには過剰な心配事について心配することもある。
双極性障害
極端な感情の高ぶり、躁状態から重度のうつ状態まで、さまざまな気分の不安定さによって定義される双極性障害によって、レーシング思考がもたらされることがある。双極性障害の躁病期には、通常、レーシング思考が起こる。根本的なテーマがなく、思考がばらばらで、絶えず変化するのは、双極性障害の躁病相の徴候である可能性がある。躁状態の思考は、急速で、集中力がなく、圧倒的であるため、日常生活の妨げになることがある。双極性障害の患者の思考は、一般的にこの障害に関連する他の症状を伴う。
アンフェタミン
アンフェタミンは中枢神経系を刺激して心拍数と血圧を上昇させ、食欲を減退させる。アンフェタミンは興奮剤であるため、これらの薬物を使用すると双極性障害の躁病相に似た状態になり、上記のような同様の症状も生じる。
注意欠陥多動性障害
注意欠陥多動性障害（ADHD）に関連するレーシング思考は、成人に多くみられる。ADHDではレーシング思考が起こりやすく、不眠症の原因になりやすい。ADHDの人のレーシング思考は、双極性障害の人のレーシング思考と同様に、ある種のパターンに従わない急速で不安定な思考の傾向がみられる。アデロールやメチルフェニデートなど、ADHDの治療に用いられる薬は、このようなレース思考を鎮めるためにADHDの患者に処方されることがある。
睡眠不足
レーシング思考は「レーシングマインド」とも呼ばれ、入眠を妨げることがある。慢性的な睡眠時無呼吸症候群や長期にわたる睡眠パターンの乱れもレーシング思考を誘発する。睡眠時無呼吸症候群や閉塞性気道障害の治療を行うことで、気流が改善され、睡眠が改善され、その結果、脳とレム睡眠機能が改善され、レーシング思考が減少する。
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症は、甲状腺が甲状腺ホルモンであるサイロキシンを過剰に産生する状態である。この過剰なサイロキシンは、不規則で速い心拍、イライラ、体重減少、神経過敏、不安、焦燥感を引き起こす。甲状腺機能亢進症では、不安感や集中力の欠如が非常によく見られ、思考が高ぶったり、パニック発作や集中力の低下を招く。
頻度
米国で最も多い精神疾患である不安障害は、10歳以上の4,000万人が罹患しており、これは米国人口の18%を占める。不安障害に罹患している人のほとんどが、何らかの形で思考が急変する症状を訴えている。
どの文化圏においても、OCDの有病率は人口の少なくとも2％であり、その大部分は強迫観念、つまりレーシング思考を持っている。これらの報告から、米国では200万人以上(2000年現在)がレーシング思考に苦しんでいると推定される。
治療法
レーシング思考を鎮めるために利用できる治療法はいろいろあり、中には薬物療法を伴うものもある。思考を紙に書き出すという治療法もある。絵を描いたり、料理をしたり、その他の趣味を楽しんだりして、心を忙しくさせ、レーシング思考から気をそらすことを勧める治療法もある。運動によって疲れさせ、心を落ち着かせることもある。パニック発作や不安発作の際にレーシング思考が不安によって引き起こされる場合は、それを待つことが推奨される。呼吸と心を同時に落ち着かせる呼吸法や瞑想法を用いることも、不安発作によって誘発されるレーシング思考に対処するための手段である。マインドフルネス瞑想も、実践者が反応することなく自分の思考に正面から向き合えるようにすることで、レーシング思考に役立つことが示されている。
これらのテクニックはすべてレーシング思考に対処するのに有用であるが、医師の診察やカウンセリングを受けることが必要な場合もある。レーシング思考は、双極性障害、不安障害、ADHDなど、他の多くの基礎的な精神疾患と関連しているため、これらの疾患の治療に一般的に使用される薬物は、患者のレーシング思考を鎮めるのに役立つ。
レーシング思考の根本的な原因に対する治療は、レーシング思考をより永続的に鎮めるために有用であり、有用である。例えば、ADHDの患者には、集中を促し、散漫な思考を静めるために使用される薬が有効である。
閉塞性気道障害の中には、鼻中隔形成術によって睡眠を改善し、レーシングマインドを減らすことができるものもある。不眠症はレーシング思考を増加させる可能性があり、そのような人は睡眠時無呼吸症候群の治療と鼻の手術がレーシング思考をなくすのに役立つことがわかるだろう。