オリンポス・モンズは、地形的にも構造的にも非対称である。長く浅い北西側の側面には、大きなスランプや正断層などの伸長地形が見られる。これとは対照的に、火山の急峻な南東側には、火山の中腹部にある階段状の段丘（スラスト断層と解釈されている）や、基部の急斜面にある多数のしわ状の尾根など、圧縮を示す特徴がある。なぜ山の反対側が異なる様式の変形を示すのか、その理由は、大きな楯状火山がどのように横方向に成長するのか、そして火山基盤の変化が山の最終的な形状にどのように影響したのかにあるのかもしれない。

大きな楯状火山は、噴出した溶岩として山腹に物質を加えるだけでなく、山麓で横に広がることによっても成長する。火山が大きくなるにつれて、火山の下の応力場は圧縮性から伸張性へと変化する。火山の裾野で地溝が発達し、その下にある地殻がばらばらに広がることもある。火山が機械的に弱い層（例えば、飽水粘土層）を含む堆積物の上にある場合、弱い層に剥離帯（デコルレメント）が発達することがある。剥離帯の伸張応力は、火山の側面に巨大な地すべりや正断層を発生させ、基底断崖の形成につながる。火山からさらに離れると、これらの剥離帯は、重なり合った重力駆動のスラスト断層の連続として現れることがある。このメカニズムは、オリンポス・モンズのオーレオール堆積物（後述）の説明として長い間引用されてきた。

オリンポス・モンスは、ノアキア紀末に形成されたと思われる古代の広大な火山台地、タルシスの膨らみの端に位置している。オリンポス・モンズが形成され始めたヘスペル紀には、火山はタルシスの高地から北部の低地盆地へと下る浅い斜面に位置していた。長い時間をかけて、これらの盆地はタルシスと南部高地から浸食された大量の堆積物を受け入れた。この堆積物には、火星の初期、地表水が豊富だった時代に形成されたノアキア紀のフィロケイ酸塩（粘土）が豊富に含まれていたと考えられ、盆地の深さが最も深い北西部で最も厚かった。火山が横方向の広がりによって成長するにつれて、摩擦の少ない剥離帯が北西の厚い堆積層で優先的に発達し、基部の断崖とオーレオール物質（Lycus Sulci）の広範な小葉を作り出した。拡散は南東方向にも起こったが、その方向はタルシスの隆起によってより制約され、火山基部に高い摩擦帯が形成された。その方向の摩擦が大きかったのは、堆積物が薄く、おそらく滑りにくい粗粒の物質で構成されていたからである。タルシスの硬く険しい基盤岩は、さらに摩擦の原因として作用した。オリンポス・モンズにおける南東方向への地下拡散の抑制は、オリンポス・モンズの山の構造的・地形的非対称性を説明することができる。オリンポス・モンズの山麓に沿った摩擦の横方向の違いを含む粒子力学の数値モデルは、火山の現在の形状と非対称性をかなりよく再現することが示されている。

弱い層に沿った剥離は、堆積物の間隙に高圧の水が存在することによって助けられたと推測されているが、これは宇宙生物学的に興味深い意味を持つだろう。火山の地下の堆積物中に飽和水層がまだ存在するとすれば、それらは高い地熱勾配と火山のマグマだまりの残留熱によって温かく保たれていた可能性が高い。火山周辺に湧水や滲出水が存在する可能性は、微生物生命体を検出するための多くの可能性を提供するだろう。

初期の観測と命名
オリンポス・モンズとタルシス地域の他のいくつかの火山は、19世紀の早い時期に望遠鏡による観測者たちによって記録された火星の砂嵐の上空に届くほど高くそびえ立っている。天文学者のパトリック・ムーアは、スキャパレリ（1835-1910）が砂嵐の時に「ノダス・ゴルディスとオリンピック・スノーがほとんど唯一の特徴であることを発見した」と指摘し、「それらが高い位置にあるに違いないと正しく推測した」と述べている。

探査機マリナー9号は1971年、世界的な砂嵐の中、火星の周回軌道に到着した。砂塵が落ち着き始めると最初に見えた物体、タルシス火山の頂上は、天文学者の予想通り、これらの地形の高度が地球上のどの山よりもはるかに高いことを実証した。マリナー9号からの観測によって、ニクス・オリンピカが火山であることが確認された。最終的に天文学者たちは、ニクス・オリンピカとして知られるアルベドの特徴にオリンポス・モンズという名前を採用した。

地域環境と周辺の特徴
オリンポス・モンズは、タルシス地域の北西端とアマゾニス平原の東端の間に位置する。タルシス火山群（アルシア火山群、パボニス火山群、アスクレウス火山群）と総称される他の3つの大きな火山から、およそ1,200 km (750 mi) 離れている。タルシス・モンテスはオリンポス・モンズよりわずかに小さい。

オリンポス・モンズの麓には、深さ約2kmの環状の窪地や堀があり、火山の巨大な重みが火星の地殻を圧迫していると考えられている。この窪地の深さは、山の南東側よりも北西側の方が深い。

オリンポス・モンズは、オリンポス・モンズ・オーレオールとして知られる、特徴的な溝や波形の地形に部分的に囲まれている。オーレオールはいくつかの大きな裂け目で構成されている。火山の北西にあるオーレオールは750km（470マイル）にも及び、リカス・スルチ（北緯24度36分、東経219度00分）として知られている。オリンポス・モンズの東側では、オーレオールは部分的に溶岩流に覆われているが、露出しているところでは別の名前で呼ばれている（例えばギガス・スルチ）。オーレオールの起源については議論が続いているが、巨大な地滑りや重力によってオリンポス・モンズ楯岩の端から剥がれ落ちたスラスト板によって形成された可能性が高い。