「えーっと殺しに来たって事は···戦わないといけないのかな?」
全く予想していなかったので、思わず情けないことを口走ってしまう。
「うむ」
オリヴィエが冷たい目で俺を見ながら答える。
「まぁ仕方ないか···よし、オリヴィエ・ド・ニナータ!!契約に」
「断る」
「えぇ!?」
何故かオリヴィエが戦闘を拒否し始めた。突然の反抗期なんだろうか。
「何でだよ!!」
「今日は何となく気分が乗らん」
「お前命狙われてるんだぞ!?分かってる!?」
「おい、少年」
オリヴィエとの言い争いを遮るように低い声が響く。
「アポピス!」
「良いだろう、私がこの女の相手をしてやる」
アポピスはそう言うと、持っていた金色の杖を剣へと変えた。
「本当に良いのか?」
「あぁ、構わない。それにオリヴィエには魔界での借りがある」
アポピスはそう言って、剣先を窮奇へと向けた。
「さぁ、私を殺せ」
アポピスが光る剣先を窮奇へ向ける。
奴は暫くそれを呆然と眺めていたが、やがて目付きが鋭いものへと変わった。
「ははは!!面白い芸アル!!でも、すぐにお前を血塗れにしてやるネ」
「それは、こちとて同じことだ」
アポピスが疾風の如く斬りかかった。
窮奇はそれを軽くかわして、アポピスの喉元へ突き入る。
しかし、奴の手刀はアポピスの手の中にあった。
「甘いな。その程度の動きで私の命を奪えると思っているのか」
「ふん!!ほざいてられるのも今のうちネ」
窮奇はアポピスの手から自分の手を引き抜き、後ろへ跳んで間合いをとった。
「今のは準備運動ネ。ここからが本番アルヨ」
奴はそう言うと、両手を前へと伸ばし、何やら呪文のようなものを唱え始めた。
「肉体強化か。そんな子供騙しでは私は倒せない」
「ふふ···まあ見てろネ」
「さあみんな!集まるネ!」
突如、近くの塀や物陰から3人飛び出してきた。
「渾沌(こんとん)!」
「饕餮(とうてつ)!」
「檮杌(とうこつ)…!」
「そしてリーダーの窮奇!4人揃って…」
「「「「四凶特選隊!!」」」」
ひゅう、と冷たい風が吹いた。
「今のって…」
「ギ〇ュー特選隊だな」
「お前いつの間にドラ〇ンボール読んだんだ!てかアレ何なのあれ。意味不明だし1人足りないし」
バッチリポーズを決めた4人は、それぞれ動き出す。
動物の仮面を付けているようだ。百均とかに売ってそうな、子供受けするような動物の仮面。窮奇は虎の仮面を付けると、バッと翼を広げた。
「1人足りないっていうツッコミは聞き飽きたアルヨ。故郷に変わっておしおきヨ!」
「セーラー〇ーンか…」
「だからいつの間に見たんだお前は!!」
アポピスが剣を杖に変えて降る。
黒いオーラが噴出し、蛇の形になった。
「アイエエエ!?ヘビ!?ヘビナンデ!?」
「ちょ、饕餮!落ち着くアル!」
「コレが落ち着けるかああ!!てかお前の中国キャラなんなのウザイ!」
「唐突!饕餮なだけに…プッ」
「笑ってるのはお前だけだ」
「…何だろうこれ」
「私にもさっぱりだ」
アポピスが呆れたように溜息を吐いた。
「四凶特撰隊」なるものが現れてから、何とも言えない空気が流れ続けている。
もう限界だ。俺はこういう明らかにスベッている空気は耐えられない。
「···少年。こんな時どうすれば良いのだろう」
アポピスがお手上げというような仕草をしながら俺に助けを求める。
「···笑えば良いと思うよ」
俺も場の空気に呑まれて意味不明な返答をしてしまう。
「それはエヴァン○リオンか」
「おお!!よく分かったなぁ」
珍しくオリヴィエがフォローしてくれた。
「アポピス、とりあえずあいつら倒しちゃって」
「了解した。」
アポピスが四凶特撰隊へ斬りかかった。
もうその後は知らない。倒したんじゃないの?俺は知らない。