堂本香織です

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92名無しさん
2022-03-28 16:10:34
ID:BHKtwitQ(sage)

一人称でも三人称でも「私小説」は成立します。つまり、認識論的な視点をどこに設定するか、という問題と、それが「私小説」であるかどうか、という問題は無関係である、ということです。
 
しかし、こうは言えるでしょう。「私小説は“魂”の視点から書かれた小説である」と。
 
いじめは何故悪いのか?それは魂の殺人だからです。レイプは何故今よりも重罪に問われるべきなのか?やはり魂の殺人だからです。
 
キャスフィ避難所「小説BBS」に“いじめ”を題材にした小説が多いのは複雑化し個人が原子化した現代世界、そしてそれを言葉やイメージだけでつなぐネット社会の必然とも言えるでしょう。
 

93名無しさん
2022-03-28 16:20:44
ID:BHKtwitQ(sage)

≪参考・引用文献(008)≫
 
「いじめ小説 〜涙の選択肢〜」作者名:りんご
https://rakuen.jeison.biz/novel/read/?343
 
作者コメント…なりすまし よしお 絶対来んな
 
〔注:「よしお」とは、『晒しの楽園』の喧嘩師にして成済師の「よしお」のことです。彼は喧嘩思想や喧嘩文学において最も重要な人物のひとりですが、ここでは言及しません。〕
 
 
第一話「ー花夢中学校入学式前日ー」
 
私は高田優美♪
そして明日は花夢中学校に入学するの!

「楽しみだな〜入学式♪」
そんな事を思っていると「ピロン」携帯のLINEの着信音が鳴る。
LINEを見ると親友の花奈から1件来ていた。
「何だろ」
そして私はLINEを読み始めた。
★花奈★
『明日入学式だね〜!めっちゃ楽しみ!』3:40
『そーだね!制服も可愛いしめっちゃ楽しみー!』3:42(既読)
『それでさー!明日あそこのファミマで待ち合わせない?』3:44
『りょっ!』3:45(既読)
それから花奈から連絡は来なかった。
親友もいるし!ほんとに明日が楽しみだな♪
ちなみに花夢中学校とはお嬢様学校で制服も可愛くみんな頭がいいと有名な中学校で誰もが憧れる学校なのだ。
その学校に私が入りたいと言うと両親はすんなりOKしてくれたんだ。
本当に嬉しい…
でも私は心配なこともあった。
「いじめ」テレビとかでもよく女子校でいじめがあると聞いているから余計に不安だった。
「まっ大丈夫だよね♪」
あんな有名な学校にイジメなんてあるわけないもんね。
私はそう信じた。
 

94名無しさん
2022-03-28 16:48:01
ID:BHKtwitQ(sage)

しかし主人公優美の思いとは裏腹に、教室には不穏な空気が流れます。入学早々、となりの席の「壱城マリ」から親友の「花奈」を手を切れ、と言われるのです。さもないと、お前はボッチになる、と。
 
ところが、これから“いじめ”が始まるという段になって唐突に小説は中断されます。もちろん、これは昔、現代文学でよく見られた「宙吊り」などではなく、単に作者がその先を書けなくなってしまったのです。ネットの投稿小説では普遍的に見られる現象ですが、それがかえって“いじめ”というものの本質を際立たせています。
 
この小説では、そもそも「何がいじめを誘発したのか?」という具体的なエピソードが書かれていません。入学早々、いきなり隣の席の人間から「自分(マリ)を選ぶか親友(花奈)を選ぶか」という選択を迫られ、「未知の隣人よりも既知の親友を選ぶ」当然の選択をした結果、いじめのターゲットになったのです。しかし、いじめとはこのようなものではないでしょうか?何かそれらしいエピソードを描くよりも、「はじめに“いじめ”ありき」で、後からそれを実現する具体的な行動が出てくる。この方がはるかにリアルです。また、作者の目的がいじめを描く「いじめ小説」であるにもかかわらず、いじめが始まる前に小説が終了するというのもリアルです。作者にとっていじめは想像の外側にあったということでしょう。“いじめ”とは、想像界に開いた“穴”、そこから少しだけ現実界が垣間見えるような、そんな“穴”なのです。
 

95名無しさん
2022-03-28 17:18:08
ID:BHKtwitQ(sage)

「想像界」「現実界」「象徴界」というのは、周知のごとく精神分析学の文脈でラカンが提出した概念です。ラカンはフロイトの思想を継承し、それを様々な概念装置で定式化し直した思想家であり、「想像界」はフロイトでいうと「意識」ないしは「自我」の世界、あるいはそれより少し無意識に近い「前意識」の世界に相当し、「現実界」は「無意識」の世界、それも無意識の奥底にあるような無数のエネルギーや力が何の秩序もなく渦巻いているような世界です。アリストテレスは物体を形や秩序を与える「形相」と、形を与えられる“素材”である「質料」が結合したものとして説明しましたが、「現実界」とは、一切の形相を欠いた「純粋質料」の世界であるといえます。「象徴界」とは、フロイトでいえば「超自我」の世界、社会的・歴史的に形成された秩序や制度、道徳や法の世界です。「言語」は当然、この世界に属します。アリストテレスの用語でいうならば「形相」の世界であるといってもいいでしょう。
 
ややこしい話ですが、このような構成からみると、我々が生きている「現実」は、「現実界」ではなく、むしろ「想像界」に属します。ただし、そこには「象徴界」の介入もあれば、至る所に「現実界」が垣間見える“穴”が開いているというわけです。
 
次にわれわれが参考とする小説は、我々の生きている想像界がいかに脆いものであるかを描写しつくした傑作です。
 

96名無しさん
2022-03-28 17:24:01
ID:BHKtwitQ(sage)

≪参考・引用文献(009)≫
 
「暴虐滅殺記」作者名:背徳院カルマ◆W2nuxSZIYc
 
作者コメント…いじめ ジェノサイド ブレイク
 
第一話:ブチコワレロ
第二話:よしおの生い立ち
第三話:よしおの就職
第四話:よしおの封印
第五話:ゴゴゴゴゴゴゴゴ
第六話:よしおンボール
第七話:裏切り…?王の鉄槌
第八話:越えられない壁
第九話:キンモクvsよしお
 

97名無しさん
2022-03-28 17:28:56
ID:BHKtwitQ(sage)

この小説の主人公は、『晒しの楽園』の喧嘩師にして成済師の「よしお」です。しかし、彼は喧嘩思想や喧嘩文学において最も重要な人物のひとりですが、ここではそのことには言及しません。
 
第一話の「ブチコワレロ」は、いきなり「現実界」に渦巻く「純粋質料」の描写からはじまります。
 
------------------------------------------------------
 
漆黒 それは 昼間も常に、人の心の内に在る


「やいやい。貧乏人のくせに学校に来るな」
「そうだそうだ」
「お前の家を燃やすぞ糞奴」

「僕が何をしたっていうんだ」

「うるせぇ、死ね」

鈍い音。殴打され、視界 歪曲すること180°

「がっ」

更に世界 反転すること二回

「……殺す気か」

「お前なんか死んだってな、誰も悲しまないさ」
「そうだ、死ね」
「死ね」

「悪党どもが。卑劣だ。愚鈍だ。強欲だ。」

「あ?」
「何だって?」
「どうしても死にたいらしいな」

「……………………」
 

98名無しさん
2022-03-28 17:37:23
ID:BHKtwitQ(sage)

“いじめ”の様子を描写した普遍性のあるシークエンスですが、散文というより一種の象徴詩として読むべきものでしょう。と同時に、何故「よしお」という存在が生まれたのか、という個人的な来歴の説明にもなっています。

99名無しさん
2022-03-28 17:39:54
ID:BHKtwitQ(sage)

リンクを貼り忘れたので、貼っておきましょう。
ただ、ここでは全文を引用するつもりです。
  
「暴虐滅殺記」作者名:背徳院カルマ◆W2nuxSZIYc
https://rakuen.jeison.biz/novel/read/?315
 
 

100名無しさん
2022-03-28 17:42:41
ID:BHKtwitQ(sage)

第二話:よしおの生い立ち
 
よしお君「ぐげげぇ(ぐげげぇ)」
 
成田先生「こら、よしお君!黒板に『殺す』って書いたらダメってあれだけ言ったでしょ!」
 
よしお君「え?あ、う…おぅぅ(知らないよ)」
 
成田先生「今すぐ消しなさい!」
 
よしお君「おうぅ!うぉ!(先生殺す!)」
 
成田先生「先生にそんな小技が通用するものですか!エターナル・レッド・ヴァルキリー(肘打ち)!」
 
よしお君「もぎゃぁぁぁぁっ(うわぁぁぁぁぁぁっ)」
 

101名無しさん
2022-03-28 17:51:55
ID:BHKtwitQ(sage)

よしおの専売特許ともいうべき「殺す!」は、ここではよしおが考案したものではなく、「いつの間にか自分が言ったことにされていたもの」となっています。そのことの弁明すらできないよしお。その怒りの表現が自分オリジナルの言葉ではなく、「誰かに自分が言った言葉だとされた言葉」である「殺す!」でしか在りえないことが、よしおという人生の論理的な哀しみを表しています。しかし、よく考えてみれば、これは誰にも当てはまることではないでしょうか。怒りの対象への怒りの表現自体が、その怒りの対象から与えられたものだとしたら・・・。ここには、「言葉」そしてそれを含む「象徴界」の恐ろしさ表現されています。

102名無しさん
2022-03-28 17:54:46
ID:BHKtwitQ(sage)

≪訂正≫
 
(誤)「象徴界」の恐ろしさ表現されています。
 
(正)「象徴界」の恐ろしさが表現されています。
 

103名無しさん
2022-03-28 17:58:29
ID:BHKtwitQ(sage)

第三話:よしおの就職
 
 
二階堂先生「では志望動機を」
 
よしお君「殺す!」
 
ガオンッ
 
二階堂先生「うわっつ!?危ないなぁ…………し、志望動機を」
 
よしお君「殺すっすっす!」
 
ガオンッ ビシュッ ドカッ シュルルル ボン
 
成田先生「…すみません、コイツ生徒の頃からこうなんです」
 
二階堂先生「マジですか?」
 
 
ジャリジャリ
 
 
二階堂先生「鎖で拘束したからもう動けないだろ」
 
よしお君「うががごごォォ」
 
成田先生「コイツは自我を持ってしまって、自我のない頃より凶暴になったんです」
 
二階堂先生「そうなんですか」
 
成田先生「……2025年には原発を破壊。その後、対処に来た陸上自衛隊第四師団を一瞬で壊滅させました」
 
二階堂先生「それ普通に学校通えないんじゃ…」
 
成田先生「…まあ、そうなんですけど、……学校に通えるようにしてくれないと殺す!って……」
 
二階堂先生「奴の殺す!攻撃には逆らえぬのですか」
 
成田先生「ええ」
 

104名無しさん
2022-03-28 18:13:42
ID:BHKtwitQ(sage)

ここでは、よしおはウクライナに侵攻したロシアよりも強力な存在です。先の第二話では、よしおの自己表現の基本的条件にすら介入する「象徴界」の恐ろしさが描かれていましたが、ここでは一転して、「象徴界」がそのまま具体化したような機構である「学校」がよしおをコントロールできない様子が描かれています。そして、よしおによる具体的な力の行使が「殺す!攻撃」なのです。いったい、よしおとは何なのでしょうか?
 
私も、忙しい社会生活の合間に、ふと考えることがあります。「それにしても、よしおとは何なのか?」と。作者はこの疑問を「学校という制度の手に余る存在」として描きます。しかも、単なる学校生活ではなく、就職面接のシミュレーションという場面で。「これから学校という象徴界の出先機関を離れ、広い広い社会へと放たれる」、そのことの“社会的不安”を描き出しているのです。この不安は、この小説を読む者の“道徳的不安”でもあります。「わたしは特別支援学級のことを想像してしまっているのではないか?」と。

105名無しさん
2022-03-28 18:25:36
ID:BHKtwitQ(sage)

第四話:よしおの封印
 
 
───アルトの丘

数々の死者の鬼籍にして、その魂の浄化の礎

───アルトの丘

そこに一人の男がいた。

幾度もの転生。手に入れたのは無限に生きる「カルマ」という魂。それを以て人は彼を「死を知る唯一の不死鳥」と呼ぶ。

「汝ら一片の悔恨を大海の餌食とせしめ、磐石を喰らい定礎を喰らうこと獣の如し。……我此所に蘇生の法を見出し……永劫の死と生を謳う者なりて───」
 

106名無しさん
2022-03-28 18:35:34
ID:BHKtwitQ(sage)

第三話の後、学校を卒業したよしお。当然、読者は第四話でよしおの社会生活が描かれると想像します。ところが、そこに待ち受けていたのは、人生すら卒業したよしおの姿でした。
 
「幾度もの転生。手に入れたのは無限に生きる『カルマ』という魂。それを以て人は彼を『死を知る唯一の不死鳥』と呼ぶ。」
 
この一文を読んで手塚治虫の『火の鳥』を想像しない者はいないでしょう。
 
関係ないですが、むかし手塚治虫の息子、手塚眞との対談で黒沢清が発した「プロレスの実況の要素を映画に導入できないかと思ってます」という言葉は単行本ではカットされていました。
 

107名無しさん
2022-03-28 18:39:25
ID:BHKtwitQ(sage)

第五話:ゴゴゴゴゴゴゴゴ
 
 
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


「……王の血はよく馴染む」

「だが、まだ足りない」

「……血を寄越せ…じゃなかった、殺す!コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ…コロォス!!」

ナリサン「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!震えるぞハート!燃え尽きる程ヒィィーーートォォォォォ!ゴォォォォォォォォォッドフ◯ィンガアァァァァァァァーーーーーーー!!!」

ニカイド・ワゴン「アブアァイ!ナリサンの熱い拳が!拳が!拳が!!SIOの体を貫くゥゥゥゥゥゥ!」

ドギャバァァァァァァァァッ!!!

「ぐわっ!これが合作の力か…ァァァァァァァ!!!korororororororororororororo………」

ドグワダダダダダダダッ

ナリサン「懺悔すべし、SIO!」

SIO「キラークイ◯ーン!」

ナリサン「ファッ!?」

SIO「ふふふ…驚いたか俗物どもめ!私は毎日首だけになりながら殺す殺すと呟いていたのさ、そしたらいつの間にかキラークイ◯ーンが発現してた」

ナリサン「それマ?オワタ」

ニカイド・ワゴン「ダ……ダメダズンドコドーン…」

SIO「killyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyy!!!」


アーアアアーアーアー♪ デデーン デデーン♪

ニカイド・ワゴン「はッ!?この音は……!?」
 

108名無しさん
2022-03-28 19:00:12
ID:BHKtwitQ(sage)

「SIO」というのは、よしおのハンドルネーム「よしおのしお」に由来するものです。ここでは、よしおは『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する闇の帝王DIOに擬せられています。
 
哲学者の東浩紀は、「象徴界」には社会的な生活を可能にする制度的インフラだけではなく、様々なサブカルチャーから吸収されたデータベースも存在すると論じました。それが「現実界」から湧き上がってくる様々な「衝動」に応じて組み合わさり、膨大な量のサブカルチャーに浸された中で生きるわれわれの「想像界」の現実として現れる、というのです。つまり、よしおの自己表現の基本的な条件として「殺す!」が組み込まれていたのと同じように、われわれの自己表現の基本的な条件として、ある程度整理され「象徴界」で共有されることとなった巨大なサブカメチャーのデータベースが組み込まれている、というわけです。

第五話では、そのようなデータベースの“蓋”が開いて、情報が「想像界」へと散逸していく様子が描かれています。
 

109名無しさん
2022-03-28 19:02:12
ID:BHKtwitQ(sage)

第六話:よしおンボール
 
 
「殺す!」

ポーヒー

気弾を発射しようとするヨシオット。

ナリータは間一髪…どころか滅茶苦茶余裕な顔で避ける。

すかさずニッコロの魔貫光殺法が炸裂。

ヨシオットの腹を貫通する。

「グエッ!殺す…コロスゥ…コォロォスゥゥゥ……」
 

110名無しさん
2022-03-28 19:13:33
ID:BHKtwitQ(sage)

どうやら、よしおは「現実」の直線的な歴史の時間軸の中で転生を繰り返すのみか、様々な可能世界、身も蓋もなく言ってしまえば、「虚構」の世界へも転生しているようです。論理や物理法則など、ある程度安定した「想像界」のことをわれわれは「現実」と呼んでいるにすぎず、「虚構」もまた「想像界」のひとつの姿にほかならないのです。
 

111名無しさん
2022-03-28 19:14:59
ID:BHKtwitQ(sage)

第七話:裏切り…?王の鉄槌
 
 
「殺す!」

「駄犬ごときに乃公が殺せるか?」

「殺す!」

凄まじい剣戟。
どちらが勝てど結果は同じ。
両者ともに唯我独尊という 悲劇の戦い。

「コロォォォォォォォォス!!」

「死ね狂人!」

ガツンッ

ガンッ

ドドドドドドドド

「頂点である乃公に少しでも近づこう等ッ!?」

「貴様を殺して世界を壊す!!」

「ふん、この勝負、乃公の勝……」
ドスッ
「エボラッ!!」

「……何!?何も攻撃してないのに王が死んだ!」



刹那的。


──


──


──

「乃公の名を語るとはなぁ……お前も落ちたものだ」

「んな!!お…お前は…!」

「驚き屈服しろ。乃公が本物の王だ。その礼灰とやらはただの偽者、つまらん駄犬だ」

「え?は?ちょwおまw礼灰は俺の味方だよ?何で味方のくせに俺と戦うの?馬鹿なの?」

「知るか、奴は同情するふりをして裏切る味噌野郎だ」

「それマ?」

「うん」

「ちょwショックだよ!」

「うん、取り敢えず死ね」

ドドドドドドドド

「ギピャー!」

「死んだな、まぁどうせコイツは再生するのだろう、コイツの始末は任せたぞ駄犬。適当にな」

???「は!」

112名無しさん
2022-03-28 19:47:44
ID:BHKtwitQ(sage)

同じufotable作品でも、fateシリーズの戦闘と鬼滅の刃の戦闘では大きな違いがあります。それは、戦闘シーンのそれぞれの行動、それぞれの勝ち負けに、納得のできる「根拠」が付随しているかどうか、という点です。もちろん、程度の差ではあるのですが、fateシリーズの戦闘では「流れ」があるだけであり、どっちが勝つかはその戦闘の流れの中である行為がどこに位置するか、ということのみに依存しているように見えます。言ってみれば「音楽的な勝利」です。それに対して、鬼滅の戦闘は「論理的」であり、特に主人公・竈門炭治郎の戦闘は主人公自身が「実況」で解説してくれます。面白いことに、それを見ている我々の感情は、「論理的な勝利」の方により強く動かされます。「知るか、奴は同情するふりをして裏切る味噌野郎だ」――これに納得できる読者はそうはいないでしょう。しかし、fate世界の本質を極めて正確に表現しています。そこは真実も虚構もいかなる価値観もフラットな超平面の世界。そこでは、
 
「どちらが勝てど結果は同じ。両者ともに唯我独尊という 悲劇の戦い。」
 
ということになります。われわれが生きている「現実」はまだそんなところまでは到達していませんが、ものすごい速さでそっちの方へ移動していることは確かでしょう。それは、サブカルチャーのみならず、人生に起こるあらゆることがデータベース化され、組み合わされるだけの世界。要するに、ニーチェの「永劫回帰」の世界です。
 

113名無しさん
2022-03-28 19:50:56
ID:BHKtwitQ(sage)

第八話:越えられない壁
 
 
よしお「殺す!」

比翼の均衡者「史実に異端内容 混入。これにより史純度100%から27%へ下落。崩壊パターンの予測を開始する。…重ねてこれより、不純史の除去を開始する。」

よしお「何をわけのわからんことを…殺す!」

比翼の均衡者「史外への排除 及び 浄化システム(BD)発動 により 現界に影響あり」

よしお「………うう、ヤバそうだな……世界の理に傷が入り始めた。歴史自ら歴史を崩すつもりか?」

比翼の均衡者「歴史 史実より 異端 異物 を 排除する」

よしお「……やってみるがいいさ。理を排除出来るか何か知らんが、俺を倒すことは出来んぜ」
 

114名無しさん
2022-03-28 20:10:13
ID:BHKtwitQ(sage)

第八話では、この小説において最も重要な独創である「史純度」という概念が提示されます。これは、様々な異世界、平行世界を「歴史の純度」の違いによるグラデーションとして理解するという枠組みです。つまり、どこかに純度100%の世界とその歴史があり、他の世界はそこにどれほどの「不純物」が混ざっているかということでその「距離」(空間的な距離ではない)を測定できる、というわけです。ただし、「純度100%の世界」というのは、ただ1つだけ絶対的に存在するわけではなく、ある世界に生きる人にとってはその世界が「純度100%の世界」というだけのことです。つまり、「現実」も「空想」も「虚構」もそれぞれの世界では「純度100%の世界」であり、その世界の人々にとって不要と思われるものが「不純物」にされるだけのことなのですが、ともかく、これにより、様々な世界の「距離」を測定し、一定のパースペクティブの下でソートする(データを規則的に並べ替える)ことが可能になったのです。

事実、「史実」からよしおを排除しても、他の適当な世界に置かれるだけで、彼を絶対的に倒すことはできなかったのです。
 

115名無しさん
2022-03-28 20:13:17
ID:BHKtwitQ(sage)

第九話:キンモクvsよしお
 
 
「俺はキンモク……宵闇の中、この聖堂十字武装で貴様を倒す者 キンモクセイだ」
 
「殺す!」
 
「ワンパターンだな殺す殺すって。読者も飽きるわ」
 
「メタ発言すんな!物語の世界観ぶち壊しじゃねぇか!殺す!」
 
「いやぶっちゃけもう世界観ぐちゃぐちゃだろ。見ろよ。何か途中物語が色々とヤバい方向向かってるんだぞ。ドラゴン◯ールの世界になったかと思えばジョ◯ョの世界になるし」
 
「知らねー!殺す!」
 
「この世界は狂ってる。俺も、お前も。この裏には何かあるんだよ」
 
「はぁーあ知らねー!ホント殺す!」
 
ピッ
 
「あ、お巡りさーん、コイツに殺されそうなんで助けてくださーい」
 
「現代的な方法で解決しようとすんな!お前聖堂の騎士だろ!」
 
「いやお前すぐ殺してこようとするから」
 

116名無しさん
2022-03-28 20:27:30
ID:BHKtwitQ(sage)

「この裏には何かあるんだよ」

ピッ
 
 
この、「ピッ」という音をテレビの電源を切るようなものと解釈するならば、登場人物は「現実」の世界に帰ってきて、
 
 
「あ、お巡りさーん、コイツに殺されそうなんで助けてくださーい」
 
「現代的な方法で解決しようとすんな!お前聖堂の騎士だろ!」
 
「いやお前すぐ殺してこようとするから」
 
 
という会話を行ったということになります。古典的な小説ならばこの結末でよいでしょうが、もはや夢オチ的なことが蛇蝎のごとく嫌われる現代にあってみれば、これはテレビモニターの電源が切れた音ではなく、リモコンのチャンネルが変わった音と解するべきでしょう。つまり、よしお世界は『トムとジェリー』のようなネバーエンディングストーリーということです。キンモクがトム、よしおがジェリーというところでしょうか。
 
ちなみに、「キンモク」とは、『晒しの楽園』の喧嘩師「キンモクセイ」のことです。『ルパン三世』でいえば、キンモクが銭形警部、よしおがルパンということになります。

117名無しさん
2022-03-28 20:35:00
ID:BHKtwitQ(sage)

https://e.z-z.jp/thbbs.cgi/djmawhtpwjmadt/51670/
 
 
1 よしお◆J6FanC
キンモクセイへ
君は僕のこと、分裂病だと断言したわね?
 
ベゲタミンを貯蔵してる僕ちんと
常陽銀行の君と
どっちが薬中なんだろうかねー
(au)
2016/4/23(土)16:05
 
 
2 キンモクちん(^^)◆ONAL82
あぅっ、ぽくも常用はしてませんし、医者にも2~3ヶ月にいっぺんしか通っていませんよ(^^)
ただ、イイ薬だと思うので、貯薬はかなりあります(^^)
(au)
2016/4/23(土)16:15
 
 
3 夢◆80cm
やはり病気かこいつ(笑)
(au)
2016/4/23(土)16:32
 
 
8 よしお◆J6FanC
ベゲタミンは最初に1錠飲んだだけで、
全く動けなくなったし
頭上に黒い渦が見えたし、これは流石にバイヤーと思ったよ
(au)
2016/4/23(土)20:49
 
 
10 キンモクちん(おさむ)◆ONAL82
>>8 ぽくの今の状況は、診察後、次の予約(8~10週間後)を入れるのですが、現在の処方は、

ゾルピデム10mg x 5(錠) x 8(週) = 40(錠)
フルニトラ 1mg x 10(錠) = 10(錠)
ベゲタミンA 20(錠)

以上でし(^^)
(au)
2016/4/24(日)0:34
 
 
11 よしお◆J6FanC
それしか飲んでないの?
俺はマイスリー10mmを28×3
最レース2mmを28×2
ベゲタミンAを28
レスリング100ミリ×28
せろくえる50ミリ×28
コントみん25×28
ハルシオン0,5mm×28
やな。
(au)
2016/4/24(日)0:53
 

118名無しさん
2022-03-28 20:39:02
ID:BHKtwitQ(sage)

これが、われわれが「殺伐の世界」と呼んでいる世界です。
葉っぱ天国において私のアイドルであったありぃが今やこの世界の住人であるという事実が、私の「想像の世界」に対する最大の脅威であることは、率直に認めざるをえません。

119名無しさん
2022-03-29 01:03:24
ID:kqmuP82s(sage)

【ありぃ「殺伐」のテーマ】
https://youtu.be/54W8kktFE_o


憶えているだろう?若かった頃。。。

君は太陽のように輝いていた

でも今の君の瞳は、青空にあいたブラックホールのようだ。


輝け 狂ったダイアモンドよ!

ひたすら世を越えていくんだ!


遠くで失笑し、あざ笑う声がする。
 
でも、君はすでに別世界の人間だ。

もはや伝説だ!殉難者だ!


輝くんだ!

世を無視するのもいいさ・・・・。

120名無しさん
2022-03-29 03:00:11
ID:kqmuP82s(sage)

≪参考・引用文献(010)≫
 
「少年少女夢みがち戦記 〜ボクらのアイデンティティ〜」作者名:益荒野
https://rakuen.jeison.biz/novel/read/?230
 
作者コメント…昭和の戦時をもとにした、異世界超能力バトルの物語。大人ではなく子供が"御国の為"戦うその世界で、必死に生きるまだ夢みがちな少年少女の物語───。
 
 
プロローグ 章輪421年
 
舞台は、異世界。戦争が永遠に続く世界。時は章輪421年第七次世界大戦の、真っ只中である。その頃には、大日本帝國は東西で分裂し、東日本帝國と西日本帝國という、二つの独立國となっていた。そして戦争の遣り方は大きく変わっていた。

それは、「若者」と呼ばれる世代よりも下の世代、未だ「子供」と呼ばれ、遊び、笑って暮らせるはずの年齢の世代の者たちまでもが戦争に駆り出される。それは何処の國々も変わらない。そして。勿論若者、子供たちの平均的個体能力によって戦争は左右されるが、それよりも大きな鍵を握るのは、國々に混在する超能力者、又は超人と呼ばれる者たちの存在。超能力者というと、テレパシストなどを思い浮かべる方々も少なくはないが、無論それだけではない。超能力者、超人とは、「ヒトとしての域を超えた能力をもつ者」のことを指すのだ。その者たちの活躍によってまた、戦争は左右される。その者たちが集った隊を大日本帝國の頃より特殊小隊と呼び、特殊小隊は東日本帝國でいう新緑隊、猛火隊や激流隊といったように複数存在する。

この物語は、東日本帝國超能力者集団、特殊小隊新緑隊の夢みがちな思春期の少年少女の少し浮世離れした物語である。
 

121名無しさん
2022-03-29 03:12:31
ID:kqmuP82s(sage)

「戦い」というテーマの下で日本という舞台をどのように設えるか。そう考えると、やはり日本がいくつかの勢力に分断されているという設定は必然なのかもしれません。

122名無しさん
2022-03-29 03:20:26
ID:kqmuP82s(sage)

≪あ・じゃ・ぱん≫
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
  
  
『あ・じゃ・ぱん』は矢作俊彦の長編小説。1997年11月に新潮社より上下巻で刊行。2002年3月に加筆・訂正の上に上下巻を1冊にまとめて新装版として角川書店より刊行される。
  
この小説は、戦後日本が西側と東側に分断された「分断国家」として設定されており、戦中から戦後にかけての冷戦世界が史実とは違う歴史を歩んでいる。例えば史実では1945年8月15日にポツダム宣言を受け入れ日本は降伏しているが、この小説では8月4日にソビエト軍が北海道に上陸、8月17日に世界初の原子爆弾が事故により富士山火口に投下されている。9月24日に東経139度線を境に西側を米国・英国、東側をソビエト連邦が占領し、分割された日本の戦後が始まる。
 
小説は1990年代の昭和天皇崩御から始まる(史実では1989年1月7日)。架空の歴史の中で、田中角栄・三島由紀夫(平岡公威)・中曽根康弘・長嶋茂雄・加山雄三(池端直亮)・北島三郎(大野穣)・明石家さんま(杉本高文)など、実在の人物が全く違う立場で生きており、東西分割された日本も西ドイツと東ドイツ、南北朝鮮など実在の分断国家とは違った描かれ方をされている。例えば西側の「大日本国(The Japan)」は、多くの公的サービスを私企業が担う拝金主義国家として描かれ、主立った日本企業がアメリカ企業を買収しており[注釈 1]、吉本興業[注釈 2]創業者一族が政治家として権勢を振るっている。一方で、東側の「日本人民民主主義共和国」では「日本統一労働党」による社会主義国家となっており、戦前から存在した日本共産党はソ連の独裁者・スターリンに信用されず、排除されている。史実の社会主義国と同様、経済は停滞し、国民の生活は貧しいが、社会主義国の中では異質かつ優等生的存在となっている。
  
このように、東西に分断された日本を矢作独特のパロディとスラップスティックで描いている。
 
 
【評価】
 
福田和也は『作家の値うち』の中で、90点と高い評価をしており「膨大な言及、パロディ、皮肉、あてこすり等は、総体として到底理解不可能であり、文庫版では著者による注釈が付されるべきだが、意地悪な作家は拒否するだろう。現代小説の中で、もっとも翻訳されるべき作品である」としている。

大森望は「あえて分類するなら一種の改変歴史(オルタネートヒストリー)SFですが、最大の特徴は、実在の人物が別の顔でばんばん登湯するところ」「異常な熱意をもって構築された壮大精緻なオルタネートヒストリーが驚天動地のクライマックスに向かってぐんぐん盛り上がってゆく後半は圧巻。ところどころギャグが滑ってる気がしないでもないが、冒険小説としても無敵の面白さを誇る。年末の娯楽大作群の中でも異彩を放つ傑作」と評している。

椎名誠はドゥマゴ文学賞の選評で「日本の文学の既成概念を、かなり計算された剛腕で、暴力的にぶち破るこの小説は、極めて強烈なキャラクターと、攻撃的な武具を身にまとっていて、読む者をそいつできりきり刺しこんできます。恣意的な毒を常に発散している作品です」と評している。

123名無しさん
2022-03-29 03:29:38
ID:kqmuP82s(sage)

「小説家になろう」(https://syosetu.com/)で「日本分断」を検索すると、三つの作品がヒットしました。

①扶桑かつみ「日本分裂」
 
②居木井丈晴「小説『狭い器』 本土決戦の中で私と桜子は二人だけの世界を構築した。」
 
③典太「共和国の嵐」
 
以下、それぞれの概要を記します。

124名無しさん
2022-03-29 03:33:13
ID:kqmuP82s(sage)

①扶桑かつみ「日本分裂」
https://ncode.syosetu.com/n3127fz/
 
【作者コメント】
コンセプトは「第二次世界大戦で日本が惨敗。しかも敗戦頃の手際の悪さから日本人テリトリーは二つに分裂してしまう。」になります。
第二次世界大戦の結果、大日本帝国を二つの分断国家にすることが目的で、第二次世界大戦後に史実とよく似た日本と、北海道を中心に成立する社会主義国家の日本を作りだし、現代史を追っていきます。
ただし、叙述分は1970年くらいまでで、最後に21世紀に入るくらいまでの年表を掲載して幕となります。
なお、鬱展開からのスタートですので、苦手な方は読まないようにしてください。
また第二次世界大戦の時間内での描写は、必要最小限となります。

125名無しさん
2022-03-29 03:44:25
ID:kqmuP82s(sage)

「北日本」…「日本民主共和国=DRJ (Democratic Republic of Japan)」社会主義国家の日本
  
「南日本」…「日本国(=Japan)」史実とよく似た日本
 
 
この二つの勢力に分れた日本で、ロシアによるウクライナ侵攻にも似た事態が起こり、「日本戦争」が勃発します。
 
--------------------------------------------------
 
 1950年6月25日未明、日本民主共和国軍は南北暫定境界線を一斉に突破。

 一路、東京を目指して南下を開始した。



 距離にして最短で約150キロメートル。

 この距離を約4個師団、支援部隊を含めて約9万の兵力が、東京目指して突進を開始した。

 他にも日立、水戸を経由して脇を固めるのが2個師団、新潟方面で攻勢を仕掛ける1個師団あった。

 合計7個師団、約15万人の赤い兵士達が、平和へと歩みだしていた南側の日本へとなだれ込んだ。



 これに対して南の日本軍は、北関東には第2師団が、その少し後ろにアメリカ第77師団が駐留していた。

 新潟では、第3師団が当面の防衛に当たった。

 また関東中心部には、第1師団とアメリカ第1騎兵師団が存在していた。

 特に習志野を中心に駐留する第1騎兵師団は機甲師団であり、北日本軍の最大の障害であると共に南日本及び現地米軍の切り札だった。

 平時状態であっても、当座の武器弾薬を与えただけで、日本列島ではモンスターとなる戦力だった。

 北日本軍としては、東京と第一騎兵の間に割り込んで、東京を人質に取ることで動きを封殺する積もりだったと言われている。

 それ以外に、自らが勝てる見込みがなかったからだ。



 しかし、当初奇襲に成功した北日本軍は圧倒的だった。



 アメリカからの情報を信じて、ほとんど通常の警戒配置(デフコン3状態)のままだった第2師団は、圧倒的兵力差もあって一部が壊乱してしまう。

 その後、狭隘な谷間の地形が多いという地の利を活かして何とか態勢は立て直したが、圧倒的な劣勢下に置かれた。

 北の侵攻後すぐに出動した第77師団も、部隊が戦時動員を行っていない上に「抑止力」として北関東各地に分散していたため、書類上の戦力は発揮できなかった。



 戦力差の少ない新潟の第3師団は、事前に構築されていた山岳部の野戦要塞群に頼ることで十分に踏みとどまっていたが、関東では一週間で60キロメートル近くも進撃を許した。

 一見たいして前進していないように思えるが、福島地方から北関東にかけては当時まだ開けていない場所が多く、道も不十分だった。

 そうした場所で十万の大軍が不十分な道で長い縦列を作り、尚かつ敵と戦闘を行いながら前進したことを思えば十分な前進距離だった。

 実際、少数部隊によるねばり強い遅滞防御戦闘が北日本軍の前進をこれだけに抑え込んだのであり、僅かな阻止爆撃でも有効な戦果が挙がったほどだった。

 しかし北日本軍は自らの味方である時間を重視して、犠牲を省みず突進を繰り返し、強引な前進を実現していた。



 そして自らの血によって活路を切り開いた北日本軍は、国連総会で国連軍派遣が決まった7月2日に宇都宮、水戸前面にまで迫った。

126名無しさん
2022-03-29 03:48:40
ID:kqmuP82s(sage)

②居木井丈晴「小説『狭い器』 本土決戦の中で私と桜子は二人だけの世界を構築した。」
https://ncode.syosetu.com/n1941ec/
 
【作者コメント】
太平洋戦争末期、終戦に尽力していた鈴木内閣が陸軍のクーデターにより打倒され、米ソ両軍と血みどろの本土決戦を繰り広げたもう一つの日本。17歳以上の少女たちはみな国民義勇戦闘隊に召集され、竹槍を構えて圧倒的な敵軍と戦うことを強いられる。そのような過酷な運命に懸命に抗い、おのれのすべてを賭けてペンを執り、小説を書き続けた少女とその友人の物語。
 

127名無しさん
2022-03-29 04:27:20
ID:kqmuP82s(sage)

この小説でも北日本と南日本に分断され、戦争が起こります。ただ、「日本分裂」が常に“神の視点”から大局だけをえんえんと描くのに対して、こちらは地を這うような庶民の目線での描写となります。
 
前者は、どことどこがどのように戦っているのかがとてもよくわかるのですが、小説を読んでいる気がしません。作者の興味が、分断された日本の歴史記述にあるのですから、当然といえば当然なのですが。

後者は、どうやらソ連と戦っているらしい、ということはわかるのですが、大局についての記述がないため、ただただ登場人物の体験を脇から目撃することに終始することになります(しかし、その描写はリアルです)。
 
両者のバランスがとれていればもっとわかりやすいのですが――と書いたところで、ファーストガンダムに比べて『Z』がわかりにくかったのは、単に勢力が増えたからだけではなく、それについての大局的な説明がなかったからだということに思い至りました。
 
-----------------------------------------------------------
 
 出発してから3時間ぐらいが経った頃だった。



 突如、爆音とともに黒い点が何個か青空に浮かんだ。その黒点はきらきらと光りながらこっちへ突っ込んでくる。



「敵機ッ!」



「散れーッ!」



 黒点の翼端がきらめいて、煙を引いた曳光弾がこっちに殺到した。



 悲鳴があちこちで挙がる。

 私は足がすくんで、逃げなきゃとわかっていても座り込みそうになった。母親が私の手を取って森に私を引きずった。



 機銃弾が横殴りの雨のように降りかかり、土埃を激しく噴き上げた。既に撃たれた兵士の上にかぶさった土埃は、血と混じって泥となる。



 地獄絵図だった。



 私たちの逃げ込んだ森にも次々と銃弾は着弾し、撃ち落された葉や枝、そして木の粉がぴゅっぴゅっと落ちてくる。

 銃弾にえぐり取られた太い幹が私の隣にいたおばさんの上に落ちた。おばさんは悲鳴を上げてがくりと崩れた。頭がぱっくりとやられて太い幹の下敷きになった横顔に血がつーっと流れて落ちているのが見えて、私の頭の中の血液がずーんと冷えた。



 敵機は来たときと同じく爆音を残してあっという間に帰って行った。



 しかし札幌地区第八特設警備隊、そしてその指揮下にある国民義勇戦闘隊の三分の一が死んだり、重傷を負って動けなくなった。



「眞規子!」



 敦子が叫んでいる。敦子の隣を歩いていて逃げ遅れた元・同級生の相楽眞規子が破壊力のある大口径の銃弾に粉々に砕かれて殺されていた。

128名無しさん
2022-03-29 04:31:22
ID:kqmuP82s(sage)

③典太「共和国の嵐」
https://ncode.syosetu.com/n2245bj/
 
【作者コメント】
戦後、連合軍により南北に分割された大日本帝国。
その一方、ソビエト連邦が主導し建国された北日本共和国を舞台に、日本分断の原因を作った男の孫、進藤勇は周囲から迫害されながらも自身の存在意義を求め、やがて列強の傀儡国家と化した日本を戦火の炎で包んでいく。
戦車に代わる兵器として人型機動兵器・駆動甲冑が登場する架空戦記モノです。

129名無しさん
2022-03-29 04:40:43
ID:kqmuP82s(sage)

この作品でも「北日本」は社会主義国です。大局を要領よくまとめた記述が登場人物の思考として提示され、それに対する標準的な感情も具体的な状況の中で添えられています。しかしいかんせん未完。
 
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「…この国は一体、どうなっちまうんだろうな」



彼の祖国である大日本帝国が地図より消えて8年。

今は北日本共和国と名を変えたこの国は、宗主国であるソビエト連邦の主導の下、急速に形を変えつつあった。

共産主義の台等、秘密警察や政治委員による監視社会、検閲された情報と荒廃した東欧からやって来る無数の移民達。



そして共和国各地に駐屯するソビエト連邦軍と彼らの傀儡に過ぎない北日本政府。



そこまで考えて男は頭を振る。

一介の兵士に過ぎない自分が考える事ではない。自分は今までと同じように軍人としての職務を果たすだけだ。例え名前が変わっても、今はこの国が自分の祖国であり、守るべき対象なのは変わらない。



…変わらないはずだ。



男は自分の目に写る光景がこれからの国の未来を暗示する、酷く不吉なものに思えてならなかった。
 

130名無しさん
2022-03-29 04:51:51
ID:kqmuP82s(sage)

この作品では、「モビルスーツ」に相当する用語として機動兵器「駆動甲冑」というのが出てきて、これは私の想像ですが、「駆動甲冑」という言葉を最初に思いついて、これをなんとか形にしたかった。日本の分断というのは、それを具体化するために後から思いついた設定だったのでしょう。話が「駆動甲冑」が登場した時点で終わってしまっているのは、そのためだと思われます。

131名無しさん
2022-03-29 04:55:04
ID:kqmuP82s(sage)

ネット上の小説において「未完」はありふれた光景であり、それこそ無数に存在します。特に、作者が若ければ若いほどこの傾向は強くなるのですが、「未完」に慣れた私でもさすがに閉口したのが、次の参考作品です。

132名無しさん
2022-03-29 04:59:18
ID:kqmuP82s(sage)

≪参考・引用文献(011)≫
 
「死刑」作者名:名無し
https://rakuen.jeison.biz/novel/read/?260
 
作者コメント…罪の無い少女が死刑にされる話。登場人物は敢えて書きません。
 

133名無しさん
2022-03-29 05:03:40
ID:kqmuP82s(sage)

鬱展開が死ぬほど嫌いな私が、とりわけ嫌いなのが「罪の無い少女が殺される話」です。「だったら読むなよ」という話ですが、第一話の「後悔」というタイトルが気になってついつい開いてしまいました。そして、この小説はその第一話で中断されており、つまりは「未完」なのです。

134名無しさん
2022-03-29 05:05:44
ID:kqmuP82s(sage)

第一話「後悔」
  
 
「池永死刑人は……」
 
電源を付けていたテレビから又同じ内容が流れ出した。
 
ニュースアナウンサーが其の名前を口にした途端、僕はテレビの電源を切り、コードを抜き床に叩きつける。
 
冷蔵庫からビールを取り出し、2本目の蓋を開け、体を床に打ち付ける様に座った。
 
小さなテーブルの上の花瓶に差された梅の花の付いた枝が鼻に香りを運んで来る。
 
其の香りが更に邪魔に感じ、ビールを一気飲みした。
  
酒に弱く、横たわると意識が飛んでいく様に眠りについた。
 

135名無しさん
2022-03-29 05:15:27
ID:kqmuP82s(sage)

先ほどの「駆動甲冑」の小説が「未完」なのは理解できます。とりあえず書きたいことを書いてみて、それ以上は特に書きたいことがないことに作者自身が気付いてしまったのです。
 
しかし、この作品は何故、未完なのか全く理解できません。「罪の無い少女が死刑にされる話」は「池永死刑人は……」というテレビの音声だけで終わりなのでしょうか?
 
いや、まてよ……これはちょっと…いや、すごく長めの「俳句」なのではないか?
 
そう考えると、この作品が「未完」とは限らないとも思えてきます。
 

136名無しさん
2022-03-29 05:35:50
ID:kqmuP82s(sage)

ちなみに、「第一話」というのは、この作品が「未完」だと思い込んだ私が「一話で終わってるんですよ~」ということを言いたいがために便宜的につけたもので、元々の作品には「第一話」などという記述はない。
 
この作品は「罪の無い少女が死刑にされる話」を具体的に書く気は最初からなく、テレビを見てビールを飲んで寝る話を切り取るための「枠構造」として、それらしいことを匂わせているだけなのではないか?
 

137名無しさん
2022-03-29 05:46:09
ID:kqmuP82s(sage)

そもそも、ある小説が「未完」かどうかを誰が決めるのでしょうか……アハハ!

作者が「この小説は完結した」と思えば完結で、そうでなければ未完なのか。しかし、そうだとしても、いや、それだからこそ、それを明示してない作品では、読者には完結か未完かを決定するすべは無いことになる……
 
ちなみに、現代の文学世界では「作者の死」ということが言われ、作品を作者の意図に還元するのは時代遅れです。むしろ読者の積極的な解釈こそが作品形成の真のプロセスであって……しかし、こんな作品どうしろっていうんだよ!!
 

138名無しさん
2022-03-29 06:19:00
ID:kqmuP82s(sage)

ロラン・バルトは次のように言っています。
 
「『終えてしまう』ことへの願いは、各段階に現れる:素材の収集、執筆、推敲、タイプ清書、出版;だから各段階に、熱意があり、早くこの段階を過ぎてしまいたいという焦燥があり、それがなされてしまうと、今度は一種の失望が生じ、対象の最終的な平板さが実感される:なんだ、こんなものでしかないのか!(最初の読み直しはつらいものだ)、早く別のことに移ろう!」(『小説の準備』)
 
作者が小説を完結させるのは、「うむ、これで完結だ」と思うからではなく、焦燥と失望から「はやく別のことがしたい」と思うからなのです。
 
しかし、ノーベル文学賞を取りたいわけでもなし、何故そんなに焦ったり失望したりする必要があるのでしょうか?他の趣味と同じようにじっくりと取り組めばよいのではないか?
 
しかし、多くの「未完」作品に、バルトのいう「焦り」や「失望」が見てとれることは確かです。とはいえ、じゃあこの作品はどうなのか?というと、焦りや失望の痕跡は一切感じられません。やはり、この作品は、「俳句にまとめることができなかった俳句」なのではないでしょうか。
 

139堂本香織
2022-03-29 11:17:38
ID:O7xMHh8k

むずかしい!

140名無しさん
2022-03-29 12:02:47
ID:/E4z7xFU

堂本香織 34歳 男
つまらない事言って周りを不快にさせるのが生き甲斐

141名無しさん
2022-03-29 13:20:54
ID:kqmuP82s(sage)

えっショック😱
俺かわいそう!

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